モノづくりについて思うこと


石川県合金鋳造工業協同組合 理事長 石丸義雄氏
 景気低迷の上に、中国をはじめ東南アジアからの低価格攻勢に直面している日本の製造業は現在、将来ともにその存続が危惧されています。小さな国の日本人の生きる道は、海外から資源・資材を輸入し、付加価値をつけて輸出することで戦後混乱期から立ち上がり現在に至っているモノづくりにあり、将来もこの道を進まなければなりません。海外でのモノづくりと国内でのモノづくりの優劣を消費者が判断することになりますので、製造業者がまだまだ国内でのモノづくりには有利な点が多くあることを消費者へ発信しなければなりません。製造業は、海外製品の長所、短所に消費者の立場から目を向け、海外ではできないモノを作ることを、品質、納期、数量、コスト(クレーム要因に見合うコスト)、信頼性に基づく両者間のコミュニケーション、リピート度合い、難易度などの点からチェックすれば道は開けるはずです。
 当業界では、鋳物を安く早く高品質につくるために日々努力していますが、需要者側に鋳物製品の特性が理解できていない場合が多いのと、鋳物屋側の責任として客先へ提案するための技術不足、砂造型技術者の老齢化、若年労働者の確保の難しさがあります。昔の職人のモノづくりと現在のモノづくりの大きな違いは分業にあります。昔の職人は材料の手配から用具、工具、道具の用意に始まり完成までの工程を全部一人で行っていたのに対して、現在のモノづくりではそれぞれを別人が行っています。
 CADで作図、NCプログラムを作りボタンを押すのはよいけれど、他人の作ったプログラムに従い、機械が勝手に動き仕上がります。これでは創意工夫が入り込む余地があるのでしょうか。コンピュータの操作をする前に、小刀をつくり、木を削り、ヤスリで鉄を削り、時には手にまめをつくり、指先に切り傷を少々つけてもよいから木の柔らかさ、鉄の硬さを体に覚えさせ、砂から木型を抜いてみて抜き勾配の必要性を実感することが必要です。
 大切なのは人間の持っている五感であり、日々の勉強から得られる知識の上にたつコンピュータの及ばない第六感です。経験の浅い六感はまずいが、深く培った経験の上にたつ六感は時にはノーベル賞に値するので、若い人たちには多いに経験を積んでいただき、世界に負けない日本にしていただきたいと思います。



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