衣服の快適性を測る


 衣服は単に着るためのものから,様々な機能性を有するものへと価値観が変化しています。特に,衣服の着心地を重視した快適性素材が多く開発されており,それに伴って衣服の性能を評価する技術もより高度化しています。ここでは,繊維製品の温熱的快適性を評価する方法について紹介します。
 
1.着用実験
生活環境試験室での着用実験の様子
図1
生活環境試験室での着用実験の様子
 人体と衣服との間にできる隙間の温度・湿度・気流を「衣服内気候」と呼びます。衣服内気候は着衣時の快適性と密接に関連しており,衣服内気候が温度32℃±1℃,湿度50±10%RH,気流0.25±0.15m/secのとき最も快適であるといわれています。また,衣服による皮膚への圧迫も着心地を左右する要素の一つです。そこで快適性の評価を行う場合,図1のように被験者の体にセンサーを取り付けて着用実験を行い,衣服内気候や衣服の圧迫力を測定し,同時に官能検査を行って被験者自身が感じている着心地を数値化します。また,これらのデータと体温,心拍数,血流量等の生理的指標との相関性を解析することにより,着衣時の快適性を総合的に評価することが可能です。最近では衣服着用時における被験者の脳波を解析し,心理学的側面から快適性を考察する試みも行われています。
 
2.衣服内気候を再現する
衣服内外環境測定装置
図2 衣服内外環境測定装置
 前述の着用実験では,被験者の発汗量や体温などに個人差があるため,再現性が得られない場合があります。そこで,実際の衣服内の状態を模擬的に再現して,布の熱・水分移動特性を測定する「衣服内外環境測定装置」(図2)が開発されました。織物生地の下部から水蒸気を発生させて,織物内側の温度・湿度変化を連続的に測定しながら,水蒸気の透過速度を見積ることが可能です。これにより,衣服に縫製する前の生地の段階で,実際の着用時に近い状態で衣服の暖かさや蒸れ具合を評価することができます。
 工業試験場では,温度−20〜50℃,湿度30〜95%RHの範囲で制御できる環境試験室において,衣服内の温湿度・圧迫力・血流測定用のセンサーを用いた着用実験を行ったり,織物の熱水分移動特性を測定することができます。衣服や布団など繊維製品の快適性を評価したい方はどうぞご利用下さい。


担 当 :繊維部 守田啓輔

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