空気を利用した繊維機械

 


 空気は,身の回りに無尽蔵にありますが,意識している人は少ないと思います。工業的には,空気シリンダーやロボットの指として使用される空気アクチュエータなど,圧縮空気を利用する機器が多くあります。これらの中で空気は,重要な役割を果たしています。
 繊維業でも,糸の製造,糸の加工,そして織物の製造工程で空気が使われています。
 ここでは,糸の加工と織物の製造について紹介します。


1.空気で糸を加工する技術
 化学合成繊維を綿糸や毛糸などの天然繊維に近づけるため,糸に圧縮空気を吹きつけることで,かさ高性(ふわふわ感)を付加したり,図1に示すように種類の異なる数本の糸を絡ませて1本の糸に複合するときなどに圧縮空気が使用されています。この方式は,熱を加えていないので化学合成繊維の物性を変化させない利点があります。ここでは,圧縮空気を噴き出すノズルの設計が重要になると共に,空気圧力や噴射時間により,均一な糸を製造できるように条件を設定することが大切です。

2.空気で織物を作る技術
 空気を使って織物を作る機械は,エアジェットルームと呼ばれ,よこ糸を搬送するときに圧縮空気が利用されています。この織機は,杼(ひ)を用いる織機と比較して,5倍以上の生産能力を有しています。
 現在主流となっているのは,図2に示すような変形おさ補助ノズル方式のエアジェットルームです。この方式のエアジェットルームは,よこ糸搬送に使用する空気量が多いために,空気圧縮機にかかる電力量がかなり負担となっています。そこで,空気消費量を削減できるメインノズルや補助ノズルの開発,さらには,空気の速度を一定に保つ変形おさの開発が必要となっています。
 また,エアジェットルームは,従来,綿糸や毛糸などの天然繊維の織物を製造するために用いられてきましたが,最近ではガラス繊維やポリエステル糸などの様々な糸の織物を製造するためにも用いられています。品質の高い織物を製造するには,その糸の種類に応じてメインノズルや補助ノズルに供給する空気圧力を調節しなければなりません。
 工業試験場では,エアジェット式複合撚糸機による複合糸の開発やエアジェットルームでの空気圧力の設定条件とよこ糸速度との関係について研究を行っています。関心をお持ちになられた方はどうぞお問い合わせ下さい。

  担 当 繊維部 新谷隆二

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