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有機分子を応用した新規防錆技術の開発と実用化

■(株)本螺子製作所 本 裕一

■技術開発の背景
 当社は非鉄金属のNC切削によるミクロン精度の加工を得意としており,電気・電子部品,溶接機械用部品等を製造・販売しています。これらの製品は加工後から検査までの間の防錆対策として防錆油で被膜する必要があります。防錆油は浸けるだけの簡便性と高い防錆能力がありますが,検査工程で寸法精度に悪影響を及ぼすため,除去しなければなりません。また,その間に無防錆状態となるため,製品の表面に錆が発生することがありました。そこで,浸けるだけの簡便性に加えて,検査工程の皮膜除去が不要である銅部材用の新規防錆技術を工業試験場と共同開発しました。

■技術開発の内容
 有機分子を介して銅部材表面上にナノオーダのシリカ粒子皮膜を形成する技術が工業試験場で考案されました(図1)。
 この防錆技術を活用・実用化するため,弊社では浸漬時間,銅合金の種類,部材形状,表面粗さなどの条件を変えて防錆性能の向上を図りました。
 その結果,開発した新規防錆技術は寸法精度も弊社の管理値(±5μm)の基準を満たしており,銅合金製品の防錆対策に活用できることを確認しました。

(図1 シリカ皮膜の模式図)

■製品の特徴
 この技術を用いた試作品について塩水噴霧試験(48時間行)を行ったところ,未処理品と異なり錆が発生しませんでした(図2)。また,実際の製造条件下である弊社工場内で暴露試験(3ヶ月)を行ったところ,処理品は未処理品の表面に発生した腐食等を確認できませんでした(図3)。

(図2 塩水噴霧試験(48時間経過後))
(図3 工場内放置(3ヶ月後))

■今後の展開
 現在,開発したこの技術を実際に生産ラインへ取組むための実証実験を継続しており,実用化を目指しています