石川県工業試験場太陽光発電システム導入事例

［化学食品部］　吉村治、中村靜夫、塚林和雄
［製品科学部］　奥野孝
［管 理 部］　能口廣志

　新エネルギー・産業技術総合開発機構（ＮＥＤＯ）との共同研究「平成９年度新エネルギー発電フィールドテスト事業」公共施設等用太陽光発電フィールドテスト事業において，工業試験場の実験棟屋根に我が国では最大級の２００ｋＷ太陽光発電システムを設置し，平成１０年４月１日から本格稼動を開始した。発電した電力は施設内の照明機器，動力機器等に使用されるが，余剰電力が発生した場合は，電力会社に供給される。さらに日本では初めての試みとして，積雪地域での冬期発電効率を向上させるため，融雪機能を付与した。今後，融雪機能に関する実証化研究や，実際の負荷の下で長期運転を行い，各種データを収集・解析することにより広く社会にＰＲし，普及促進に向けて啓発活動を行っていく。
キーワード：新エネルギー・産業技術総合開発機構（ＮＥＤＯ），新エネルギー，太陽光発電，融雪機能

Introduction of Photovoltanic Power Generating System to
Industrial Research Institute of Ishikawa

Osamu YOSHIMURA,Shizuo NAKAMURA,Kazuo TSUKABAYASHI,Takashi OKUNO and Hiroshi NOGUCHI

　A 200kW photovoltanic power generating system which was one of the largest scale in Japan was introduced to the roof of the experimental facilities in Industrial Research Institute of Ishikawa by “New Energy Generation Field Tests in 1997” of New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO), and has been really operated from April 1st in 1998. The electric power generated with this sysem is consumed to run many equipments, facilities and power-driven machineries. Surplus electric power is supplied to the electric power company. As the first attempt in Japan, the system has been provided the function to melt snow on the photovolanic modulus for improving the efficiency of power generation in snowy season. We have not only investigated that function, but also analylzed the collected data from this system to determine proper technologies for introducing effective photovoltanic installation to promote the practical utilization of photovoltanic power generation.
Key Words：New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO), new energy, photovoltanic power generating system, function to melt snow

１．緒　　言
　石油，石炭，天然ガスなど限りある資源の消費により排出される二酸化炭素や窒素酸化物による地球温暖化，大気汚染，酸性雨などの地球環境問題への認識の高まりから石油代替エネルギーの開発が進められている。中でも保守が容易で無人化が可能であり，エネルギー源が無尽蔵なクリーンエネルギーである太陽光発電システムが注目されている。
　石川県では，平成８年度に「地域新エネルギービジョン」を策定し，環境にやさしい多様なエネルギー源の活用を目指して積極的に取り組んでいる。特に金沢地域では，太陽光発電を新エネルギーの中心に位置付けており，この構想を基に，石川県工業試験場では公的試験研究機関として率先垂範するため，ＮＥＤＯとの共同研究で実験棟切妻屋根に２００ｋＷの太陽光発電システムを導入した。しかし石川県等の積雪地域では，太陽光発電システムの設置は不利と考えられているため，太陽電池に逆電流を流すことが可能なシステムを採用した。このシステムは冬季間の融雪を目的としており，我が国では初めて実稼動する。
　なお，本事業はＮＥＤＯとの共同研究であるため，設置工事は本県土木部営繕課が担当し入札制度を適用した。また，仕様等については，落札企業である古河電気工業株式会社及びＮＥＤＯと協議しながら施行した。

２．太陽光発電システム
　２．１　太陽光発電設備
　２．１．１　概要
写真１　太陽光発電システム設置風景 　設置した太陽光発電アレイを写真１に示す。太陽電池アレイは12直列72並列2系統で構成され，南北両面に発電容量100ｋＷづつ均等配置した。設置角は屋根面と同一角度の16.7度，最大発電出力は209280Ｗｐ，総重量は37.1t（電池21.6t，架台15.5t），アレイ総面積1663.03m2（屋根占有面積率50.4％）である。設置に際しては，屋根面への荷重付加が東西南北で均等となるように耐震性，並びに１.5ｍの積雪荷重に十分耐えることを考慮し，さらに築14年経過した既存屋根への設置を十分配慮した。また，屋根との一体的デザイン化を図り，違和感を与えないように工夫している。さらに，デザインとともに雪止め金具等を用いてよりシンプル化に努めたため，架台の軽量化，工期の短縮，コストダウン等が可能であった。
　システムについては、高圧系統連系方式（逆潮流あり）を採用した。図１に発電のしくみの概略を示した。システムは太陽電池モジュール，架台，接続箱，インバータ，連系制御盤，データ収集装置及び表示装置等により構成され，運転は全て自動で行われる。太陽電池で発生した直流電力は，インバータにより交流電力に変換され，受変電設備を通して，通常工業試験場の管理・研究棟及び実験棟の電源として使用される。そして余剰電力が生じた時には電力会社に売電される。降雪期には，太陽電池上に積もった雪を除去するため，商用電力を利用し太陽電池に一定電流を通電し表面を発熱させることにより融雪を行う。この効果を探るため，南北に各３ブロックそれぞれ10kW容量分の融雪用太陽電池モジュールを採用した。
　なお，表１にシステムの特徴を列記した。

図１　太陽光発電システムのしくみ


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