ファジィ張力制御システムの開発 ファジィ張力制御システムの開発
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製織準備工程では，糸の張力をある一定の状態に維持するために，走行する糸にワッシャと呼ばれる二つの円盤状の重りで摩擦力を調節する方法が用いられている。しかしながら，このような方法では張力の急激な変化に対応することは困難で，織物欠点を発生させる要因となっている。そこで本研究は，張力センサ，張力テンサ，コンピュータから構成させるファジィ張力制御システムを開発し，実験の結果，この張力制御システムは，従来の張力調節方法に比べて，安定性や過渡特性に優れていることが明らかとなった。
キーワード：製織準備工程，張力制御，ファジィ理論
Development of Tension Control System Using Fuzzy Theory
Daisuke MORI, Kazuhide CHIKAOKA, Saburo HAMADE, Ryuji SHINTANI and Shigekazu NAKAGOSHI
In the preparing process for weaving, the friction control between running
filaments and two disks of washier tensers has been used to maintain filament
tension in constant level. By this method, however, it is difficult to buffer
from abrupt changes of the tension, and the incomplete tension control causes
many fabric defects. In this report, a new tension control system using Fuzzy
theory, which is composed of tension sensor, tenser device, and computer, has
been developed. As the results of experiments, it was clarified that this tension
control system was excellent in transition characteristics and stability in
tension control comparing with any other conventional tenser systems.
Key Words： preparing process, tension control, Fuzzy theory
１．緒 言
一般に合繊長繊維織物の製織準備工程には，ボビン繰，撚糸，整経などの工程があり，それぞれの工程では製織の目的や糸の種類に応じて，糸に一定の張力を作用させる必要がある。実際の工程ではこれまで，重りの加除を利用した重り式テンサにより，走行する糸への押圧を調節する方法が多く用いられてきた。しかし，この方法は張力の急激な変動や微小な変動に追随
しにくい欠点があった１）。
ポリエステル繊維など合成繊維織物の多くは，染色に際して高温高圧染色やキャリヤー染色法により，染料を繊維内部に拡散させる必要がある。
この際の染料拡散は繊維の内部構造を形成しているポリマー分子の配向や結晶化状態に強く影響される。従って染料の拡散によってもたらされる染着量（染色濃度）は繊維の内部構造に強くかかわっている２，３）。
また合繊長繊維織物に熱が加わった際の織物の寸法安定性は，加わった熱に対する繊維の微細構造の安定性，即ち，繊維の微細組織が，熱による内部応力や歪の解 消にともなって，変形を生じるか否かにかかわっている４）。
上述の染色性や寸法安定性に大きな影響をもつ繊維内部の微細組織は，製糸時あるいは，その後の加工工程等において糸に加えられる張力と熱に密接に関係して形成される。換言すれば，織物を構成するすべての糸について，製糸段階から加工段階まで，熱と張力の
もとに管理されて取り扱われない限り，織物は染色に際して染色斑を，また熱セットに際して寸法安定性の斑を生ずることになる。冒頭に述べた重り式テンサによる張力管理はこの意味で十分な制御手段とはいえず，そのためしばしば，染色斑など織物欠点の原因をつくってきた。
そこで，本研究は，この問題を解決するために，張力センサ，張力テンサ，及びコンピュータからなる自動張力制御システムを試作し，本システムと従来の張力調節方法を比較し，その有効性を調べた。
図１ ファジィ張力制御システムの構成
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