3.結  言
 意思決定を支援するグループウェアのシステム開発について述べた。まず,グループ意思決定支援の方針と手順を提案し,この手順をLAN環境の計算機上に実装した。次にシステムの機能と利用例を示し,評価実験からシステムの評価と考察を行なった。実験結果からは,本システムとの対話操作を繰り返すことで,グループの合意形成の支援に有効であることを確認できた。具体的には,本システムの使用により,各参加者にとってお互いの価値判断の認識および合意形成の経過の把握が容易となり,グループ意思決定活動における参加意識および共通認識を高めることができた。
 今後の課題として、今回の試用評価において被験者に指摘された問題点の改善と共に、決定結果に対する納得度や信頼度を高めるための工夫などが挙げられる。また、より複雑な評価構造を持つグループ意思決定問題に適用してシステムの有用性について評価を重ねることが重要である。
 なお本稿は15)の内容を基に書き改めたものである。

謝  辞
 システムの開発にあたり,有益なご助言を頂いた北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授の平石邦彦博士に感謝します。また評価実験にご協力頂いた同大学國藤研究室の大学院生の皆さんに感謝します。

参考文献
1) 石井裕: CSCWとグループウェア−協創メディアとしてのコンピュータ−, オーム社(1994).
2) DeSanctis, G. and Gallupe, R.: A Foudation for the Study of Group Decision Support Systems,Management Science, Vol.33, No.5,pp.589-609(1987).
3) 椹木義一、河村和彦(編):参加型システムズ・アプローチ−手段と応用−、日刊工業新聞社 (1981).
4) 渡部和雄: グループMCDM法に基づく日本的意思決定支援方式,情報処理学会情報システム研究会,Vol。89-IS-25, pp。1-10(1989)。
5) 三末和男、杉山公造:図的発想支援システム
D-ABDUCTOR の開発について、情報処理学会論文誌、Vol.35,No.9,pp.1739-1749(1994).
6) T.L.Saaty:Analytic Hierarchy Process,McGraw Hill(1980).
7) 刀根薫、真鍋龍太郎:AHP事例集、日科技連出版(1990).
8) 瀬尾芙巳子: 思考の技術, 有斐閣 (1994).
9) 増田達也: AHPにおける整合度および相対的重要度の感度係数, 電子情報通信学会論文誌 A,Vol.J70-A,No.11,pp.1562-1567(1987).
10) M. Stefik, G. Foster, D.G. Bobrow, K. Kahn, S. Lanning, and L. Suchman:Beyond the Chalkboard: Computer Support for Collaboration and Problem Solving in Meetings, CACM, Vol.30, No.1, pp. 32-47 (1987).
11) 経済企画庁国民生活局編: 新国民生活指標(平成4年,8年版), 大蔵省印刷局(1992,1996).
12) 社会調査研究所: 地域経済総覧'96,東洋経済(1995).
13) 宮城隼夫,平良直之,山下勝巳:加法形の一対比較行列を用いた多目的意思決定法の一手法,計測自動制御学会合同シンポジウム講演論文集,pp.119-122(1994).
14) 亀山嘉正,佐山隼敏,鈴木和彦,船戸謙,大倉輝:AHPにおける一対比較結果を表現する修飾語に割り当てる数値尺度について,第33回自動制御連合講演会論文集, pp.201-204(1990).
15) 加藤直孝,中條雅庸,國藤進:合意形成プロセスを重視したグループ意思決定支援システムの開発,情報処理学会論文誌,Vol.38,No.12,pp.2629-2639(1997).


* トップページ
* 研究報告もくじ
* 前のページ