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超高圧下におけるポリエステル織物のアルカリ減量加工

■繊維生活部 木水貢
■研究成果活用プラザ石川 新保善正
■(株)クレスポ 安部俊和
■福井大学 堀照夫

研究の背景
PET織物の風合い加工に欠かせないアルカリ減量加工は,大気圧下または十数気圧程度の圧力下で加工しており,処理時間として数時間から1日を要している。このアルカリ減量加工については,様々な条件下で研究が行われているものの,高圧による効果を検討したものがない。本研究では,100MPaを越える超高圧下でPET織物のアルカリ減量加工を行い,圧力やアルカリ濃度による加工性について検討した。

研究内容
100MPaを超える高圧下でPET織物のアルカリ減量を行った結果,PET織物の減少率はアルカリ濃度と圧力の増加に伴い増加した。また,従来アルカリ減量を促進するための促進剤の添加について検討したところ,促進剤が1g/l以下では促進剤量の増加に伴いPET織物の減量率が増加し,それ以上の濃度では一定の値を示した(図1)。
これらの結果により,算出されるアルカリ加水分解反応速度定数は,圧力の増加により増加した。
化学反応における活性化体積ΔV≠は次式により規定され,この活性化体積の値は高圧下での反応性に依存することを示す。
高圧下でのアルカリ加水分解反応での活性化体積は負を示し,このことから圧力はアルカリ加水分解反応を促進させることがわかった。また,活性化体積はアルカリ濃度によっても反応が促進された(図2)。
また,促進剤の添加については,その量に関わらず一定の値を示し(図3),無添加より活性化体積の負の値が小さくなり,促進剤の添加がPET織物の反応を僅かだが阻害していることがわかった。このことから,促進剤は界面活性剤のように繊維表面を整え,加水分解反応が起こりやすくする働きをしているものと推察される。

(図1 アルカリ減量率の圧力効果(80℃,30分))
(図2 アルカリ濃度による活性化体積変化)
(図3 界面活性剤添加量による活性化体積変化)

研究成果
100MPaを超える高圧下でPET織物のアルカリ減量を行ったところ,反応が圧力及びアルカリ濃度により促進されることが明確となった。

論文投稿
  Sen’i Gakkaishi 61, No.4, 2005. p.109-114.