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Nd:YAGレーザ用光ファイバのTiO2による先端加工(第2報) −TPファイバによるエナメル質除去特性−

■機械金属部(現,金沢大学大学院) 古本達明
■金沢大学大学院 上田隆司
■杉原歯科クリニック 杉原成良
■旭川歯科クリニック 和賀正明
■株式会社アルテック 今野明

研究の背景
レーザによる歯科治療は,1991年に「初期う蝕の進行防止療法」が高度先進医療として承認されて以来,う蝕の予防や治療に留まらず,知覚過敏症の誘発痛低減や歯周病の治療など,様々な歯科分野で臨床応用されている.特に,波長が1064nmのNd:YAGレーザ光は,石英光ファイバによる伝送が可能なため取り扱いが容易で,臨床応用に対する期待が大きい.近年は,軟組織切開時の止血や根管と呼ばれる歯内組織のより効果的な処置のため,光ファイバから出力されるレーザ光を360度全方位に照射可能とするファイバ先端の加工方法が注目されている.これまで,このような先端形状を得るため,先鋭加工による物理的な処理方法や,ファイバ先端に塗布した炭素粉末にレーザ光を吸収させる方法など種々提案されているが,ファイバ先端の耐久性や加工ファイバの持続性に課題を有していた.

研究内容
  本研究では,ファイバ先端の加工材料として,歯科治療時の口内洗浄液に一般的に含まれているTiO2粉末を用いた.図1は,提案したTiO2ペレットによるファイバ先端の加工方法である.本手法で加工したファイバ(TPファイバ)は,図2に示すように加工前後のファイバ先端からのレーザ光出力を測定してそれらの比を求め,先端の加工条件とレーザ光の減衰率から各特性を評価した.また,図3に示すようにTPファイバを用いて歯質表面に窩洞形成を行い,レーザ照射条件と窩洞体積の関係について,未加工ファイバの窩洞体積と比較しながらTPファイバの窩洞形成特性を評価した.

(図1 ファイバ先端の加工方法)
(図2 先端の加工条件と減衰率の関係)
(図3 照射条件と窩洞体積の関係)

研究成果
(1)ファイバ先端の加工条件とレーザ光出力特性の関係を調べた結果,先端からのレーザ光を効果的に減衰させるパラメータは,単パルスあたりの照射エネルギーであることがわかった.
(2)TPファイバを用いて形成した窩洞は全体的に浅く,ファイバ先端の加工がレーザ光出力を減衰させ,歯質内部への透過の危険性を低下させる効果がある.また,加工によって照射領域が広がるため,TPファイバによる治療はう蝕予防処置に効果的である.
(3)TPファイバが単位体積のエナメル質の除去に必要なエネルギは198J/mm3であり,未加工ファイバのそれと比較して40J/mm3多い.

論文投稿
  日本レーザ歯学会誌 Vol.16, No.2, 2005. p.86-92.