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低温触媒CVD法による低応力窒化シリコン膜の形成

■機械金属部 高野昌宏
■(株)石川製作所 仁木敏一 室井進
■兵庫県立大 部家彰
■北陸先端大 大薗哲郎 梅本宏信 松村英樹
■電子情報部 米澤保人 南川俊治
■産総研 増田淳

研究の背景
窒化シリコン(SiNx)膜は半導体素子のゲート絶縁膜や有機EL素子の表面保護膜などへの応用が期待されている。Cat-CVD法では,原料ガスにSiH4とNH3を用いて,低温下でSiNx膜の堆積が可能である。しかしながら,SiNx膜は,一般的に高い応力が発生することが知られている。この応力は,膜のクラック,ストレスマイグレーションや有機ELなどの基板の損傷を引き起こす原因となる。
そこで,本研究では,最適なSiNx膜の形成条件を確立することを目的として,応力発生のメカニズムについて調査した。

研究内容
  本報告では,原料ガスにSiH4,NH3,H2を用いてCat-CVD法により,SiNx膜を6インチSi基板上に堆積した。応力の発生メカニズムを明らかとするため,SiH4流量,基板温度,ガス圧をそれぞれ変化させて成膜を行い,膜の組成と応力を測定した。図1にSiH4流量を変化させたときの測定結果を示す。SiH4流量が増加するに従い,応力は圧縮方向に変化し,水素密度は増加した。一方,基板温度,ガス圧が高い場合は,引張方向に変化し,水素密度は減少した。これらの結果は,ガス(水素,アンモニア)の脱離反応に伴う膜の収縮により説明することができる。ガスの脱離反応は,基板温度,水素ラジカルによって促進されることから,基板温度,ガス圧が高い条件では,膜の水素密度の減少,引張応力の増加が起きたと考えられる。一方,SiH4流量が多い条件では,膜の堆積速度が早いことから,脱離反応が不十分であると考えられる。

(図1 堆積速度,水素密度,応力のSiH4流量依存性)

研究成果
  低温触媒CVD法により形成したSiNx膜の最適な堆積条件を確立することを目的として,膜の組成と応力の関係を調べた。得られた結果は以下のとおりである。
(1)膜に生じる引張応力は,水素やアンモニアのガス脱離反応によって誘起される。
(2)水素ガスの脱離反応のみを効果的に促進させることにより,低応力かつ低水素密度のSiNx膜を形成できる堆積条件を明らかとした。

論文投稿
  Japanese Journal of Applied Physics Vol. 44, No. 6A, 2005, p.4098-4102.