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共鳴核反応分析法によるBCN膜中の水素量解析

■機械金属部 安井治之 粟津薫
■(独)日本原子力研究開発機構 楢本洋

研究の背景
近年,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜に代表される炭素系薄膜は,工具・金型,自動車部品およびペットボトルやカミソリ刃等の民生品に実用化が急速に進んでいる。本研究では,DLC膜の摺動特性および硬度をさらに上昇させる可能性を秘めた次世代の炭窒化ホウ素(BCN)膜に着目した。このBCN膜などの炭素系薄膜は,水素との結合により硬さ等の機械的性質により大きく変化するため,膜中に存在する水素の量を非破壊で定量的に測定することが必要になるが,水素原子が内殻電子を持たないため,通常の内殻励起後の放出X線を検出する表面分析法が適用できない。そこで,高エネルギーイオンビームを利用した共鳴核反応分析(RNRA)法を利用して,BCN膜中の水素量の定量性を検討した。

研究内容
イオンビームアシスト蒸着(IBAD)法によりBCN膜を創製し,そのBCN膜へ水素イオンを注入して水素量測定試料とした。水素イオンの注入量は,8×1016ions/cm2,2×1017ions/cm2,5×1017ions/cm2の3種類とした。RNRA測定による水素量測定は,3MVタンデム加速器(日本原子力研究所高崎研究所TIARA施設)を用いた。BCN膜の各試料を,超高真空中に半日以上置いた後,6.385MeVに加速した15NイオンビームをBCN膜試料に照射し,1H(15N,αγ)12Cの核反応に伴って放出されるγ線の内,4.43MeVのエネルギーを持つγ線について,照射数(20000個,2μC)当たりのγ線収量を測定した。なお,γ線収量は,標準試料を用いることにより,水素量へと変換が可能である。このような測定方法を用い,膜中の水素原子の深さ分布を求めた。加速された15Nイオンのエネルギーを6.4MeVから6.8MeVまで10keV毎に変化させ,それぞれのエネルギーに対応する位置(深さ)でのγ線収量を評価した。

(図1 RNRA測定装置の概略)
(図2 BCN膜中の水素量測定結果)

研究成果
  IBAD法により創製したBCN膜にマイクロ波イオン源で生成した水素イオン注入した。そして,RNRA法によりBCN膜中の水素量の定量測定を検討した結果,以下のことが明らかになった。
(1)RNRA測定より,BCN膜中に存在する水素の定量分析が可能である。
(2)RNRA測定より,プラズマ中のフラグメントイオン(H2+,H+)の定量分析が可能になる。

論文投稿
  Surface & Coating Technology Vol. 196, 2005. p.221-225.