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引張変形下におけるセラミック短繊維強化アルミ合金の内部応力挙動

■企画指導部 舟木克之
■機械金属部 鷹合滋樹 藤井要
■金沢大学 佐々木敏彦 北川和夫 広瀬幸雄
■Argonne National Laboratory William A. Ellingson

研究の背景
セラミックス短繊維で強化した金属(短繊維MMC)は高い比強度と耐摩耗性を持ち,押出しや鍛造,圧延が可能なため,自動車や航空宇宙産業を中心に応用が期待されている。この材料は,延性な母相に脆性な繊維を含むため,引張変形を受けた場合には極めて複雑な内部変形を生じており,引張変形下における母相,繊維の相ひずみを知ることは短繊維MMCの強化機構や破壊メカニズムを解析し,構造用材料としての信頼性を向上させる上で非常に重要である。そこで本研究ではSiCウィスカ強化6061Al合金に引張変形を与え,その際に両相に生じた相応力測定をX線応力測定法により調べた。

研究内容
  短繊維MMCは,6061Al合金を母相に濾過法で作製したSiCウィスカプリフォームを加圧力100MPaの高圧鋳造法により複合化した。次に,母相の強度を改善するためにT6熱処理を行い,その後実験に供した。得られた複合材料の密度ρは蒸留水を用いたアルキメデス法により,理論密度ρ0との比ρ/ρ0が0.998と計測された。SiCの体積割合fはAl,SiCの理論密度から重量分率を求めたところ 0.15と算出された。
内部応力は,図1の4点曲げ治具を用いて試験片に段階的に引張変形を生じさせ,その都度X線応力測定法により求めた。負荷ひずみは底部ねじで調整,ひずみ量は裏面のひずみゲージでモニターした。
Al相には10MPa程度の引張応力が残留し,負荷ひずみε11A=2800×10-6まで相応力は直線的に増加,その後は塑性変形のため飽和した。SiC相には-100MPa以上の圧縮応力が残留し,MMC製造過程や熱処理における両相の熱膨張率のミスマッチによるものである。ε11A=800×10-6以下の領域では相応力と負荷ひずみに直線関係が成立しておらず,相応力は一旦減少し,その後反転増加した。この相応力が不安定な領域(unstable stress region)は,両相の弾性定数が極端に異なることから,弾性定数の小さなAl相が優先的に変形し,反作用であるポアソン効果によりSiC相が圧縮を受けたためと考えられる。
(図1 負荷用4点曲げ治具)
(図2 短繊維MMCの内部応力挙動)

研究成果
  X線回折法により,引張変形下におけるSiCウィスカ強化MMCの内部応力状態について明らかにした。

論文投稿
  Science and Technology of Advanced Materials Vol. 6, No. 6, 2005, p.902-909.