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研究の背景 近年,圧電セラミックスは圧電トランス,アクチュエータ,超音波モータなどハイパワー用途に用いられる場合が増えてきている。ハイパワー用圧電セラミックスは破壊を避けるため,機械的強度が要求されている。ジルコン酸チタン酸鉛(以下PZTと略す)は,一般的に圧電セラミックスとして使用されているが,鉛を含むので今後,使用を規制される可能性が高い。一方,ビスマス酸チタン酸ナトリウム(以下BNTと略す)は,高い圧電性能を示し,機械的強度に優れており鉛を含んでいないため,無鉛圧電セラミックスとして有力な候補の一つとなってきている。本研究では,PZT圧電セラミックスにBNTを添加した場合の圧電特性と機械的特性を調べた。 研究内容 BNT出発原料はBi2O3, Na2CO3, TiO2を用い,各々をボールミルで混合した後,800℃で仮焼した。次にPZT原料BNTを0.5, 1.0, 5%添加してプレス成形し,1150, 1175, 1200℃で焼成した。所定の寸法に機械加工した後,銀電極を焼き付け,シリコンオイル中で3kV/mmの直流電界を30分印加して分極した。圧電特性はインピーダンスアナライザーを用いて測定した。機械的特性は4点曲げ強さとビッカース硬さを調べた。さらにX線回折と電子顕微鏡で物性を調べた。 1)BNTは1150℃で合成でき,菱面体晶のペロブカイト結晶構造を示した。またナトリウムを原料に過剰に添加すると,第二相のBi2Ti2O7が生成した。 2)図1に示すように,0.5%と1.0%のBNTを添加したPZTの電気機械結合係数kpは,60-70%の値を示した。 3)図2に示すように,1150℃焼成の場合,0.5%と1.0%のBNTを添加したPZTは無添加のPZTよりも機械的強度が大きくなり,BNTが低温焼結助剤となっている可能性が示唆された。 (図1 BNTを添加したPZTの焼成温度と圧電特性) (図2 BNTを添加したPZTの焼成温度と曲げ強度) 研究成果 0.5%と1.0%のBNTを添加したPZTは1150℃低温焼成で機械的強度を上げることができた。本研究より,圧電セラミックスの鉛含有量の低減及び,低温焼成によるコストダウンが可能となる。 論文投稿 Journal of Materials Science Vol. 38, 2003. p.2241-2245. ・本研究は日本自転車振興会補助事業にて導入したセラミックス成形加工機を利用した。 |
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