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 巻返し工程における急激な巻径変化に対応した張力テンサ
 繊維生活部 ○森大介

研究の背景
 撚糸工程での糸切れを防ぐため,リワイディング工程において通常のワープ巻きと異なり,糸を下から積み上げるフィリング巻きを用いる場合がある。この手法は,糸層半径が異なる部分で糸速度が変化することによって張力が変動する問題があり,これが織物欠点を生じる一因となる場合がある。そこで,この問題を解決するため,電磁ブレーキを応用した張力テンサ,張力センサ及びコンピュータで構成される張力制御システムを考案し,リワイディング工程における有効性を見出したので,その内容について報告する。

研究内容
 本研究で考案した電磁ブレーキ式張力テンサの内部構造を図1に示す。考案したテンサは,電磁コイル,回転ローラ及びセパレータローラで構成される。回転ローラとセパレータローラの軸は平行ではないため,走行する糸は回転ローラとセパレータローラに螺旋状に巻かれる。また,電磁コイルに流れる電流を変えることにより,回転ローラと電磁コイル間に作用する磁力を変化させることができる。これにより,回転ローラの回転トルクを変更させることで,走行する糸の張力を調節することができる。
また,糸速度が急激に変化するフィリング巻きにおいて,考案した張力テンサにPID制御とファジイ制御手法を用いた場合の効果について調べ,従来手法との比較を行った。実験はポリエステル75D/36fの糸を用い,設定張力値を20cNで制御させ,巻始めから巻終わりまでのRMS値を調べた。図2より,ヒステリシステンサでは時間の経過にともなってRMS値が増加している。これは,糸層半径の変化量が多くなることにともなって糸速度の変化も増加することから張力の変動も大きくなったためと考えられる。しかし,PID制御やファジイ制御では糸層半径の変化にともなう張力変動が小さく,巻始めから巻終わりまで制御の効果が現れていることがわかる。

(図1 電磁ブレーキ式張力テンサ)

(図2 張力変動の経時変化)

研究成果
 本研究で考案した張力制御手法は,フィリング巻工程において糸速度が急激に変化することによって生じる張力変動を軽減することができた。

論文投稿
 日本繊維機械学会 Vol. 57, No. 1, 2004.




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