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 官公庁向け文書決裁業務支援システムの開発と運用評価
 製品科学部 ○林克明 上田芳弘 加藤直孝
 金沢大学工学部 木村春彦

研究の背景
 近年,多くの企業や組織において,複数の担当者にまたがる業務プロセスの流れ(ワークフロー)を管理,自動化することを実現するためのワークフローシステムが注目されている。ワークフローシステムは,定型業務か非定型業務か,そして,基幹業務か支援業務かで区分され,4分類される。このうち,定型・基幹業務に対するワークフローシステムの利用が最も進みつつある。本研究では,官公庁において意思決定を行う重要な業務である文書決裁業務を対象とした。本業務は,非定型・支援業務に分類されるが,この業務に対するワークフローシステムの適用や運用評価はあまり行われていない。そのため,決裁業務にも使用されるワークフローシステムの構築,運用評価の報告が望まれている。

研究内容

(図 システムの起動直後の初期画面)

 本研究により,非定型(業務の手順がそのつど業務ごとに変わるもの)・支援業務(企業,組織の活動を支援する業務)に分類されるワークフローシステムを効率的に構築するためには,人間の柔軟な処理方法をシステムに取り入れることが重要と分かった。この処理方法とは,業務を遂行する上で,明文化されたルールなどによるのではなく,組織内で自然発生的,経験的に確立されてきた暗黙のルールといえる方法により処理する方法であり,このことに着目している研究例は無い。この方法を取り入れて,石川県工業試験場の文書決裁システムを,市販アプリケーションの適用ではなく,独自に構築して,15カ月間の運用評価を行った。またこれまでの研究でのシステム評価は,主に定量的に行われてきた。しかし,本研究では,システム利用者に直接アンケート調査を行う定性的評価を行い,システム構築に必要と思われる要件を知ることができた。

研究成果
 文書決裁業務にワークフローシステムを取り入れて運用し,定量的評価を行った。また,定性的評価を行うことにより,組織毎に異なると推測されるシステムの要件を効率よく獲得できることも分かった。
(1) システム効率として,決裁完了時間がシステム構築前に比して,10.3%向上し,情報周知性は,最大3.7倍,平均22.4%向上した。
(2) システム構築の要件として,セキュリティの向上が望まれていた。そのため,システムに改良を施し,暗号技術の導入や,バックアップの体制を整えた。
(3) 構築した文書決裁システムは,業務を効率的にし,かつ利用者に受け入れやすく構築できた。

論文投稿
 情報処理学会論文誌. Vol.43, No.10, 2002, p.3219-3230.




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