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 応答曲面法を用いたマンホール蓋の最小重量設計
 機械電子部 ○多加充彦
 金沢大学工学部 尾田十八

研究の背景
 道路一般に使用される下水道用マンホール蓋は,車両などの通行時に生じる荷重に耐える強度が必要なため,蓋の裏側がリブで補強された重厚な構造となっている。しかし,製造・運搬コストの削減,工事に伴う蓋の開閉作業の負担軽減などの問題があり,軽量化を図ることが望まれている。これまで,JIS A 5506に規定されている格子状のリブ形態をもつマンホール蓋の軽量化の検討が行われているが,より軽量化を図るには,構造最適化の見地からJISの荷重試験の適合条件を満たす新しいリブ構造の設計検討が必要である。また,蓋の強度に関して,JISの荷重試験では,矩形板の配置による荷重条件の相違がリブ構造にどのように影響するかの検討が行われておらず,設計上この問題を吟味することも必要となっている。


研究内容
 本研究では,図1示すようなJIS A 5506に記載される互いに直交する格子状のリブ構造(Type1)と,新たに提案した円周状リブと半径方向リブを組み合わせた構造(Type2)のマンホール蓋に対し,肉厚や補強リブの寸法を設計変数として,それぞれの重量を最小にする構造最適化を試み,比較検討による設計指針の考察を行った。
 最適化では,解析コストの軽減を図るため,設計変数と蓋の重量および複数の応力とたわみの関係を統計的に扱う応答曲面法によって推定式を求めることにした。これらの推定式は,下限値と上限値を設定した設計変数の設計空間の中から実験計画法により設計点を選択し,その設計点での重量計算,たわみや応力の有限要素法(FEM)解析を行い,二次多項式によって近似的に構築した。重量の推定式を目的関数,たわみおよび最大応力の推定式を制約関数に用い,遺伝的アルゴリズム(GA)によって重量を最小化する補強リブの形状,配置の最適化を実施した結果,図2のような最適構造が得られた。

(図1 マンホール蓋の構造)

(図2 最適構造(1/4対称))

研究成果
 マンホール蓋の重量最小化の設計指針を得るため,JISの荷重試験における矩形板の設置角度と蓋に生じるたわみや応力との関係をFEM解析によって明らかにし,さらに応答曲面法によるたわみと応力の推定式を制約条件に用いて最適化する方法を提案した。この推定式を用いた構造最適化の結果,2種類のマンホール蓋はいずれもリブ丈が高く肉厚の薄い構造となり,しかも矩形板の設置角度の影響が少ないものが得られた。

論文投稿
 日本設計工学会誌. Vol.37, No.5, 2002. p.243-248.



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