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 PZT圧電セラミックスの高パルス電圧印加時における疲労特性
  北川賀津一* 豊田丈紫* 山名一男*  北川和夫**  山本孝***
    *化学食品部 **金沢大学 ***防衛大学校

研究の背景
近年,圧電トランス,圧電アクチュエータおよび超音波モータなどのハイパワー用圧電セラミックスの需要が増加している。これらの素子は情報化時代に対応して小型でかつ薄型で使用されるために,ハイパワー用圧電セラミックスでは,発熱による温度上昇による電気的特性(電気機械結合係数(k31),機械的品質係数(Qm))の劣化と共振振動による機械的疲労破壊が問題となっている。

研究内容
 本研究では,50kHzで共振振動するようにPZT圧電セラミックス(主成分はチタン酸ジルコン酸鉛,Pb(Ti,Zr)O3)を機械加工した(図1)。試料は長手方向に高パルス電圧印加部分を節として共振振動を行い,試料の発熱,圧電特性,そして試料の破断からその疲労特性を調べた。PZT圧電セラミックスには図1に示す機械的品質係数Qm=1250のhigh-Qm材とQm=75のlow-Qm材の2種類を使用した。
high-Qm材とlow-Qm材にパルス電圧を印加すると節  図1 high-Qm材とlow-Qm材の試料形状と大きさ
である中央部分は最も応力が大きく変位は0となる。腹の部分にあたる試料両端では変位が最も大きくなるが,発生応力は最も小さくなる。
試料中央節部分の表面温度を熱電対で測定した結果,弾性損失の大きいlow-Qm材の方がhigh-Qm材と比較して約2〜3倍発熱による温度上昇が大きくなった。また電圧よりもパルス回数に温度上昇が依存することがわかった。圧電特性でk31はhigh-Qm材とlow-Qm材のいずれにおいても低下しない。一方,Qm値はlow-Qm材で17%,high-Qm材で37%の低下が観測された。上記原因は繰り返し電圧印加による疲労と考えら  図2 high-Qm材とlow-Qm材の圧電特性値の変化
れる。

研究成果
 PZT圧電セラミックスを高励振振動した際の疲労挙動を調べた結果以下の事がわかった。
(1) パルス数に比例して温度上昇が観測された。
(2) パルス電圧印加後k31値は低下しないが,Qm値はlow-Qm材で17%,high-Qm材で37%の低下が観測された。
(3) low-Qm材はhigh-Qm材と比較して,パルス電圧を印加しても破壊しにくい。

論文投稿
 粉体粉末冶金協会 2001 Vol.48 No.9 P.796-800



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