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 PZT強誘電体キャパシタ用SiNx保護膜の触媒CVD法による低温作製
  南川俊治* 部家彰* 米澤保人* 藤森敬和** 中村孝** 増田淳*** 松村英樹***
   *機械電子部 **ローム梶@***北陸先端科学技術大学院大学

研究の背景
強誘電体は,電界を取り除いても分極が残る性質があるため,書き換え可能な不揮発メモリの材料として用いられている。そのメモリは,高速,低消費電力等優れた特性を持つことから,実用化され,大容量化が進んでいる。大容量化のためには,低温で高品質窒化シリコン(SiNx)保護膜の作製が求められている。一方,触媒CVD法(Cat-CVD)は,高温のタングステン線を触媒に用い,300℃程度の低温で良質(緻密、低含有水素量等)なSiNx膜の作製ができる。しかし,300℃の作製温度では,作製雰囲気中に生じる水素によるPZTの強誘電特性が劣化することが知られている。そのため,Cat-CVD法を用いて基板温度が200℃前後でPZT強誘電体キャパシタ上にSiNx膜の作製を試みた。

研究内容
本報告では,Cat-CVD法を用いて基板温度200℃以下でシリコン基板上,及びシリコン基板上に形成したPZT強誘電体キャパシタ(Ir-based電極/PZT/Pt/IrO2)上にSiNx膜の作製を試みた。

図1 低温作製したSiNx膜の赤外吸収スペクトル

図2 PZT強誘電体キャパシタのヒステリシス特性
材料ガスにシラン(SiH4)及びアンモニア(NH3)を用いた。図1に175℃及び200℃で作製したSiNx膜の赤外吸収特性を示した。Si-Nの大きなピークの他にSi-H,N-H等水素に関連したピークが見られ,SiNx膜中にかなりの多くの水素が含まれている。作製当初は基板温度にかかわらず大きな相違はない。しかし,基板温度175℃のSiNx膜では,経時により酸化が進み,劣化しているが,200℃で作製したSiNx膜では,酸化は進まず,緻密な膜が作製されたことが示された。次に,基板温度200℃でPZT強誘電体キャパシタ上にSiNx膜を作製し,強誘電特性を測定したヒステリシス特性を図2に示した。SiNx膜作製前後で強誘電体キャパシタのヒステリシスループに変化がほとんど見られず,PZTの強誘電特性がSiNx膜を作製することに劣化も無く、低電圧でも動作可能であった。

研究成果
Cat-CVD法を用いて,基板温度200℃で作製したSiNx膜は,酸化が進まない緻密な膜であり。PZT強誘電体キャパシタ上にも強誘電特性を劣化させることがなかった。この結果から,Cat-CVD法によるSiNx膜は強誘電体デバイスの保護膜として利用可能であることが分かった。

論文投稿
Thin Solid Films 395 2001 p.284-287



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