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 ハイブリッド型パルス・プラズマ・コーティング(HPPC)システムで創製した膜
  粟津薫* 安井治之* 作道訓之** 佐治栄治** 岡崎健一** 長谷川祐史**  池永訓昭** 佐藤貴之** 南保幸男** 斎藤和雄**

研究の背景
イオンプレーティング法やイオン注入法では,工具・金型での深溝,内面等の複雑形状部への均一な成膜や表面改質が難しく,これらの課題を解決できる新たな技術開発が求められていた。そこで,北陸三県の産学官で構成したプロジェクトで,ハイブリッド型パルス・プラズマ・コーティング(HPPC)システムの研究開発を行い,開発したHPPCシステムを検証するため,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の成膜を行い,成膜した膜の特性を調べた。

研究内容
 開発したHPPCシステムは,真空容器(1m3),真空排気系,マイクロ波(2.45GHz),高周波(13.56MHz),高電圧パルス発生電源(40kV-20A)からなり,原料ガス(トルエン)供給を1Hzでon/offさせ,プラズマ点火,負の高電圧パルス印加を行うシステムを完成させた。パルスタイミングの一例を図1に示す。


   図1 パルスタイミング


  図2 創製したDLC膜の硬さ
HPPCシステムによるDLC膜の成膜プロセスは,真空排気後,@アルゴンガスによるイオンボンバード処理,Aトルエンガスによるイオンミキシング処理,BトルエンガスによるDLC膜の成膜処理からなる。図2にイオンミキシング時のパルス電圧を変えて成膜したDLC膜の硬さを測定した結果を示す。イオンミキシング電圧を大きくするとDLC膜の硬さが増加する。また,同様にミキシング電圧を変えて成膜したDLC膜のスクラッチ試験では,実用レベル以上の密着力が得られた。さらに,膜の均一性についても試験し,従来以上の着き回り性が得られた。

研究成果
 プラズマCVDとイオンビームミキシングを組み合わせたハイブリッド型パルス・プラズマ・コーティングシステムは,DLC膜の成膜プロセスの確立により,膜の硬さ,膜の密着性,さらにモデル金型を使った複雑形状部への均一な成膜により,有効性を実証した。
 本研究は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の地域コンソーシアム研究開発事業として実施したものである。

論文投稿
 2001 American Institute of Physics, 16th Int'l. Conf. Application of Accelerator in Research and Industry, p.955-958.
*機械電子部 **HPPCプロジェクト(地域コンソーシアム)



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