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 機能的連続体によるマイクロデバイスの設計法
  多加充彦* 尾田十八** 冨阪正裕***
   *機械電子部 **金沢大工学部 ***金沢大学大学院

研究の背景
近年,医療分野をはじめとする様々な分野でマイクロマシンのような微小な機械の利用が必要になってきている。しかし,機械の微小化が進むに伴い,部品の組立てが困難となったり,部品間の摩擦・摩耗やガタが性能に大きく影響を及ぼすなどの問題が生じている。そのため,機構部品をそのまま縮小して組立てるのではなく,必要な機能を1つの連続体構造に置き換えることが有効な解決手段と考えられている。しかし,複数部品で成し得た機構と同等な機能をもつ連続体を設計することはきわめて困難な作業であり,設計者のひらめきや経験,過去のデータを基に試行錯誤によって行われているのが現状である。


図1 グリッパの設計仕様
図2 メカニズムモデル

図3 グリッパ本体
研究内容
 本研究は,メカニズムと同じような機能を発揮する連続体のことを機能的連続体(Functional Continuum)と呼び,ある設計目的に対し,段階を踏んだ手順によってその機能を発揮する連続体構造を導く手法を提案した。つまり,ステップ1で必要な機能を満たすメカニズムモデルを構築し,ステップ2でフレーム構造モデルに変換し,ステップ3で連続体へ変換する方法である。なお,メカニズムモデルは進化的Lシステムと呼ぶ位相形態創生手法を用いて構築される。
次に,本手法を用いて微小変位を拡大するデバイス構造や微小物を掴むマイクログリッパの設計を試みた。図1は圧電アクチュエータの微小変位を拡大して2つのフィンガによって対象物を掴むマイクログリッパの設計仕様,図2はその機能を満たすメカニズムモデルを示したものである。最終的に設計した連続体部品を図3のように試作し,機能評価を行うことにより,本設計手法で得られた構造の妥当性を評価した。

研究成果
 微小な機械に対応した連続体構造の設計法を検討した結果,以下の結論を得た。
(1) 要求される機能に対して,メカニズムモデルの構築,フレーム構造モデルへの変換,最後に連続体へと変換することにより,機能的連続体を設計する手法を提示した。
(2) 本設計手法によってグリッパの設計を行い,圧電アクチュエータの微小変位を7倍以上の大きさに拡大して対象物を掴む機能をもつ機能的連続体が製作できた。

論文投稿
 日本機械学会論文集,67-663,A(2001),p14-19



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