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 石炭灰を利用したメソポーラス物質の合成
−窯業原料としての石炭灰の有効利用2−
  プラシャント・クマール* 山名一男**
    *化学食品部STAフェロー **化学食品部(現,商工労働部)

研究の背景
数nmの構造単位を持つメソ構造体は,ゼオライトよりも大きなスケールの分子単位に対し吸着・分離材として利用することが可能であり,工業的な応用を含めた数多くの研究がされている。しかしながら,工業用としてのメソポーラス物質の大量生産を考えた場合,合成に用いるテンプレートの毒性や原料コストといった問題がある。そこで本研究ではメソポーラス物質(MCM-41,MCM-48)の原料としての石炭灰の利用を検討し,合成を試みた。

図1 メソポーラス物質のX線回折パターン


図2 MCM-41とMCM-48の窒素吸着特性
研究内容
メソポーラス物質のSiおよびAl原料として七尾大田火力発電所より発生した石炭灰を用いた。MCM-41はゼオライト合成の前処理として用いた溶融物質の上澄みを用いて合成した。またMCM-48はCTMABrおよびC12(EO)4との混合界面活性剤を鋳型として用いた。合成条件は,323Kで4日間オートクレーブ処理を行い室温にて1日保持した。MCM-48の場合,pH調整後さらに373Kで3日間熱処理した。得られた物質は濾過後,焼成をおこなって界面活性剤を除去した。物性評価にはX線回折,蛍光X線測定,表面積測定,SEM,TEM,FT-IR,TG-DTAおよびNMR測定を用いた。

研究成果
石炭灰からのメソポーラス物質の合成について検討を行い,以下の結果を得ることが出来た。
(1) X線回折測定から,石炭灰を利用したメソポーラス物質の生成を初めて確認した。
(2) 低濃度のCTMABrの条件で合成した場合はMCM-41が得られた。一方,MCM-48はC12(EO)4を含む混合物でのみ合成可能であり,その最適値はCTMABr/ C12(EO)4が0.55/0.18であった。
(3) NMR測定からメソポーラス物質における四面体位置にはAlが高濃度に占有しており,種々の触媒への応用へ利用が可能であることがわかった。


論文投稿
Journal of Material Chemistry, Vol.11, 2000, p.3285-3292



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