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 石炭灰から合成したゼオライトの特性評価と触媒活性
−窯業原料としての石炭灰の有効利用1−
  プラシャント・クマール* 山名一男**
    *化学食品部STAフェロー **化学食品部(現,商工労働部)

研究の背景
電力供給源としての火力発電は,オイルショック以降石油エネルギーへの依存度を低下させ,石炭火力電源にシフトしており,全電気量の約37%を占めている。その結果として大量の石炭灰(フライアッシュ)が発生しており,石炭灰の有効利用を検討する必要が生じてきた。石川県でも,七尾市大田火力発電所から大量の石炭灰が発生しているものの,他県でのセメント原料以外への利用はほとんどなされていない。我々は,フィルターや触媒として利用価値の高いゼオライト(沸石)を石炭灰から合成することを試みた。


図1 合成物のX線回折パターン
 (a:標準物質,b,c:合成ゼオライト)

図2 石炭灰(a)と合成ゼオライト(b,c,d)のSEM像
研究内容
実験には七尾大田火力発電所から排出された石炭灰を利用した。ゼオライト合成の前処理として水酸化ナトリウムと混合し,溶融後に濾過・乾燥した。Y型ゼオライト単一層が得られるようにアルミ珪酸塩のスラリーを種材として準備し,323Kで48時間と373Kで48時間オートクレーブ処理を行った。最後に沈殿物を濾過して乾燥することでゼオライトが得られた。
石炭灰から得られたY型ゼオライトはX線回折法およびSEM写真観察により結晶性の評価を行った。粒度分布および化学分析はレーザー回折法粒度分布装置および蛍光X線分析装置にて行った。また,表面積およびイオン交換能を測定し,NMR測定を行った。触媒活性はクメン・クラッキング法により評価した。

研究成果
石炭灰からのゼオライト合成方法について検討を行い,以下の結果を得ることが出来た。
(1) 本合成手法から得られたY型ゼオライトは石炭灰中の大部 分のSiとAl成分が高効率に変換され,純粋なゼオライトと遜色のない触媒活性を示した。
(2) 溶融粉末溶液の浮遊物はより純粋なY型ゼオライトを生成 し、沈殿物がゼオライト化のために再利用できることがわか った。
(3) 石炭灰の溶融条件は水熱処理によるゼオライト合成の効率 を高めることに重要な役割を示すことがわかった。


論文投稿
Journal of the Ceramic Society of Japan, Vol.109, 2001, p.968-973



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