全文 (PDFファイル:38KB、1ページ)


 炭素繊維を用いた多層形電波吸収体の電波吸収性能
  豊田丈紫* 北川賀津一* 吉村慶之**
    *化学食品部 **機械電子部

研究の背景
移動通信システムの高度化によるオフィス等での急速なデジタル通信機器の普及に伴って,電磁環境の悪化が懸念されている。電磁波障害は機器の誤動作から人体への影響といった社会問題にまで発展しており,利便性を損なわずに安全な生活をおくるための電磁波対策は必要不可欠である。最適な電磁波環境を構築するには,電磁波に対して反射および吸収を示す材料を適度に配置することが必要となる。特に無線通信機器が大量に使用されるオフィスにおける安全な電磁環境を構築するためには遮蔽材(反射+吸収)の利用が必要な状況となっている。

図1 炭素繊維交織織物によるl/4型電波吸収体の吸収特性


図2 電波吸収体の吸収特性
(a)多層形電波吸収体
(b)単層形電波吸収体
研究内容
本研究では,各種繊維織物と電波吸収材との多層構造による電波吸収体の開発に取り組んだ。まず,炭素繊維含有量の異なるビニロン交織織物のシールド性能をアドバンテスト法にて測定した。次に,炭素繊維織物を反射板とし,各種交織織物を抵抗皮膜とするl/4型吸収体を作製して,電波吸収測定を行った。さらに,炭素繊維織物とビニロン交織織物を磁性体(フェライト)と誘電体(ポリウレタン樹脂)の複合材へ積層して多層形電波吸収体を検討した。入射側に炭素繊維含有量の異なるビニロン交織織物を積層した電磁波多層吸収体(30cm×30cm)を作製し,電波吸収測定に用いた。電波吸収量は電波無響室内にネットワークアナライザーとホーンアンテナを配置し,自由空間法にて評価した。

研究成果
交織織物をGHz帯での抵抗皮膜として利用し,電磁波の封じ込め効果について検証した。図1に炭素繊維交織織物を用いたl/4型電波吸収体の吸収量の測定結果を示す。炭素含有量20%の交織織物の場合に最も大きな吸収性能が得られた。次に多層材に対して電波吸収量評価を行った。その結果,20%含有交織織物との多層材に関してフェライト単層の場合に比べて大きな吸収効果を示すことがわかった(図2)。このことからも,炭素繊維含有交織織物を利用することで電磁波の封じ込め効果が得られ,吸収性能の向上に貢献すると考えられる。


論文投稿
Proceedings of The 18th International Korea-Japan Seminar on Ceramics, 2001 p.642-646



* トップページ
* 研究報告もくじ

概要のページに戻る