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  においセンサを用いた居住者の活動認識
−相関ルールによる認識率の向上−
  上田芳弘* 古川真士** 木村春彦** 大薮多可志***
    *情報指導部 **金沢大学 ***金沢星稜大学

研究の背景
 図 実験環境
人口の高齢化が急速に進展し,高齢者世帯数が急増している。このため,高齢者宅におけるセキュリティの向上や事故防止及び保険衛生の確保などを目的に,各種センサを用いた生活環境のモニタリングに関する研究が着手され始めている。本研究では,においセンサを用いて居住者の活動を認識することを目指す。においセンサは,これまでのガスセンサと同様にガス漏れ検知などに有効で,かつ今後は有害ガスのみならず不快臭の検知に役立つものと期待されている。このようなにおいセンサは,一般家庭にも受け入れられやすく,その出力からガス漏れや消臭などのためのにおい検知と同時に,居住者の活動認識を可能とすれば,有益なセンサシステムが構築できるものと考えられる。

研究内容
一般に,においセンサは単体のガスに反応するのではなく,複数のガスに鋭敏に反応するため,室内のガス濃度に影響を与え,かつ長時間継続する活動の認識でも実用上十分な認識率を得ることは難しい。そこで本研究では,まず居住者の活動を正しく認識できたセンサ出力を正の事例とし,逆に認識を誤ったセンサ出力を負の事例としてデータを収集した。このデータを利用し,近年データマイニングの技術の中で注目されている相関ルールを拡張して認識率の向上を図った。すなわち,相関ルールにより大量データ中の規則性(ルール)を効率よく抽出できるので,正しく認識できた正の事例と認識を誤った負の事例,それぞれから正のルールと負のルールを抽出し,これらのルールにより認識結果を補正する方法を提案した。なお,一般的な認識アルゴリズム(LBG)により認識を行い,この結果を正と負のルールと照合することにより補正を行った。
実験は図に示すような居住空間において12箇所ににおいセンサを設置し,居住者を成人男性1名として,季節の異なる3月,7月,11月の計3回行った。1回の実験は,19時間から31時間継続し,居住者には自分のとった行動を時刻とともに記録してもらった。

研究成果
上記の実験結果から以下2点が分かった。
(1) 正と負の事例データが適正かつ十分に収集できれば,提案方法により認識率は平均21%向上する
(2) 得られた認識率は活動別に,就寝75.3%,調理・食事82.3%,窓の開閉など換気92.6%であった
これらの認識率を考慮すると,例えば何日間も連続して食事あるいは換気をしていないなどということが分かれば良い場合,すなわち保健衛生を目的としたモニタリングで,提案手法が有益であるといえる。

論文投稿
電気学会論文誌E 2001 Vol.121-E No.6 P. 343-350



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