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石川県繊維産業の国際的な産業振興を図るため,平成9年度より,工業試験場は絹織物の産地として世界的に有名なイタリア共和国のコモ市にあるシルク研究所と相互技術交流を実施している。
平成10年9月22日〜平成10年12月18日において,シルク研究所を拠点として,コモ地区の織布技術や世界的な織物見本市を調査し,最新織物サンプルの収集・解析を行った。
キーワード:絹織物,織布,織物見本市
Report of the International Research Exchange Program with the Industry,
University, Government Cooperation
-Investigation of Italian weaving technique-
Daisuke MORI
In order to promote the development of textile industry in Ishikawa prefecture,
International joint research project between our institute and COMO STAZIONE
SPERIMENTALE per LA SETA has been carried out since 1997. Como City is
very famous for worldwide place of production about silk fabric. The weaving
technique of textile industry in Como City was investigated, staying at
COMO STAZIONE SPERIMENTALE per LA SETA during September 22nd to 18th December
in 1998. The newest samples of fabrics were collected at the world-famous
textile exhibitions, the design conditions of them were analyzed in cooperation
with staff of STAZIONE SPERIMENTALE per LA SETA.
Key Words:silk fabric, weaving, exhibition of textile
1.緒言
石川県は,基幹産業である繊維産業の活性化を図るため,絹織物産地として世界的に有名なイタリア・コモ市との地域交流を進めている。石川県工業試験場(以下工試)は,この交流を技術的な面から支援を行うため,平成9年度より,イタリア・コモ市の研究機関であるシルク研究所やミラノ大学コモ校と研究交流を実施している。平成10年度は,シルク研究所を拠点として,コモ地区繊維産業の状況,企画提案型企業,世界的に有名な織物見本市等の調査を行った。その際,約100点の最新織物サンプルを収集し,シルク研究所と共同で設計条件の解析(織物分解設計)を行った。
2.コモ地区繊維産業の調査
2.1 シルク研究所
シルク研究所は,繊維産業の技術的支援を行うことを目的に,1923年に開設され,研究機関が集中しているミラノ市ピオラ地区に本部が置かれている。コモ地区繊維産業界からの要望により,1994年にインスブリア大学(1998年にミラノ大学コモ校より大学名を変更)が開校されたことにともなって,その一部が移転されてコモシルク研究所が創立された。(シルク研究所の業務内容及び研究活動については,参考文献:1))の本報告に係る前報参照)
コモシルク研究所は,インスブリア大学に隣接しており,同敷地内には絹織物博物館やテキスタイルの教育機関等があり,絹織物の産地コモ市を象徴している。
イタリアでは,シルクの原糸や原布を輸入する際,購入金額に応じて課税され,その税金がシルク研究所の運営資金に当てられている。この種の研究所は,シルク研究所を含めて8ヶ所存在し,イタリアの特産品であるガラス,皮,食品等の地場産業の発展を支援している。
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図1 シルク研究所(ミラノ本部) |
2.2 コモ地区繊維産業の特徴
コモ市には製品企画やマーケティングを行いながら関係企業への発注によって製造工程を統括するコンバータと呼ばれる企業が1,000以上,独立のテキスタイルデザインオフィスが100以上ある。コンバータは,従業員が1〜2名のものから生産設備の保有の有無の区別,また,デザインを外注に依存しているところなど多種多様である。これらのコンバータがシーズン毎の商品の方向性を設定し,商品企画を行っている。
コモ市の繊維産地としての特徴は,上記のようなコンバータに加えて,これらと連動しまたは独自に活動するテキスタイルデザインオフィスが加わり,工程専業企業の熟練技術によって豊富な繊維製品を提供している。
2.3 コモ地区における繊維技術の調査
織布企業5社,繊維機械メーカー2社,デザインオフィス1社の計8社を訪問し,コモ地区繊維産業の調査を実施した。調査した企業の内訳と特徴を表1に示す。織布企業の内,Taiana社とGiussani
Tessuti社は,コモ地区としては中規模であるが,従業員の半分がマーケティングや商品開発を行っている企画提案型の企業である。特にTaiana社の主要設備は,全てボーナス社製の電子ジャガード付きレピア織機が約40台(バーマテックス)とスズキワーパーのサンプリング整経機等があり,先染織物の生産を中心に行っている。年間約500以上の織物サンプルを試織し,後述するIDEA
COMOやMODA IN等の織物見本市へ出展し,バイヤーへ直接提案・販売をしている。見込み生産を行わず,最少受注単位は,サンプル受注で5m,本受注で50m,納期は1カ月で,多品種少量生産体制を確立している。
また,E.BOSELLI社は,小規模企業が大半を占める絹織物産地のコモ地区にあって,従業員が1,000人以上で製織準備,織布,染色の設備を有する大規模企業であり,ポリエステルを中心に撚糸,製織,染織加工等の一貫生産を行っている。同社は,合成繊維の先進国である日本の加工技術に強い関心を持っている。
表1 調査企業とその特徴
会社名 | 内容 | |
織物 | Tessitura TAIANA Virgilio SpA | 高級衣料分野で毎年織物サンプルを 500点以上開発する企画提案型企業。 |
Giussani Tessuti | 先染織物を生産。社員40名の約半分が マーケティングや新商品開発を行って いる企画提案型企業。 | |
TMI | 帝人、マンテロ、伊藤忠の三社による 合弁会社。準備、織機、染色の設備を 有し、高級ポリエステル織物の一貫 生産。 | |
Loro Piana | 準備、織機、染色の設備を有し、高級 毛織物の一貫生産。カシミヤのコート地 は世界一の品質を誇る。最小受注単位は 50m。 | |
E,Boselli&C.S.p.A. | 準備、織機、染色の設備を有し、高級 ポリエステル織物の一貫生産。絹織物産地 コモ地域にあってポリエステルの新しい 加工技術の開発に意欲的。 | |
繊維機械 | Somet | レピアとエアジェット織機を生産。 パーマテックス社と提携し技術力を強化。 |
Jakob Muller | 細幅織物用織機を生産。部品の95%以上 を自社生産。細幅用織物の自動検反装置の 開発に成功。 | |
デザイン | CAD Tessile & Multimedia | テキスタイル用デザイン画の製造販売。 浴衣用デザインを7点購入 |
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