平成10年度研究報告 VOL.48
中能登地域における織物設計・製造技術の指導事例 |
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3.新規織物の試作
新規織物提案としての壁装材の試作,および織物企画の参考とするための織物組織サンプルの製織を,柄変更が容易な電子ジャカードシステムを用いて行った。以下にその概要を示す。
3.1 電子ジャカードシステム
電子ジャカードシステムは,石川メイド生産機械の(株)石川製作所製のレピアルーム(ISL-1001-U)とストーブリ社製の電子ジャカード(CX-860)から構成されている。また,電子ジャカード用紋紙データの作成には,(株)両毛システムズ製の製織データ(CGS)作成システム(CADj/Win)を使用した。
レピアルームのおさ幅は150cmで,よこ糸選択は機械式4色でジャカードの針信号で制御される。この織機は,レギュラー糸のほか,各種混紡糸,意匠糸等の広範囲な混織に対応でき,差別化商品の製織が可能で高級衣料やインテリア関係に最適である。
電子ジャカードのたて糸制御本数は2688口で,選針方式は電子制御方式で,最高回転数550min-1と高速織機にも対応している。ジャカードを制御するコントローラは,従来から用いられている紋紙データ(CGSフロッピー)を読み取り,コントローラ内で制御信号に変換することができる。さらに,コントローラは組織の編集機能を持っており,地組織や耳組織を製織時に変更することが可能である。
3.2 壁装材の試作
図6は,試作した壁装材を金沢ステーションギャラリーに展示したときの写真である。紋様は,インドのグジャラート州アーメダバード市にある「キャリコ染織博物館」所蔵品の柄から選定した。
この壁装材の織密度はたて74本/cm,よこ32本/cmでたて糸にポリエステル55.5dtex,よこ糸にレーヨン166.6dtexとポリエステル(カチオン可染糸)166.6dtexを用い,赤を基調とした異色染めとして仕上げた。
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図6 壁装材の試作 |
図6 壁装材の試作 |
3.3 織物組織サンプル帳の作成
綜絖枠12枚使いの織物組織269点を製織し,織方図作成ソフトで作成した織方図を添付し,織物組織サンプル帳としてまとめた。織物サンプルの織り密度はたて74本/cm,よこ32本/cmである。また,たて糸にポリエステル55.5dtexの白色,よこ糸にポリエステル加工糸166.6dtexの黒色を用いて,たて糸3本を同時に上下させることにより,たて糸とよこ糸の太さをほぼ等しくし,組織を良く理解できるようにした。図7は,作成したサンプル帳である。269点は2冊に分冊されている。また,織方図作成ソフトで確認できる組織図のデータをフロッピーディスクで添付した。
4.結言
平成7年度から本技術指導事業を行ない,ドビー織物用の織方図作成ソフトウェアの開発および新規織物の試作を行った。開発した織方図作成ソフトウェアにより,組織図から紋栓図,引込図を迅速に描くことが可能となった。また,たて糸とよこ糸の密度に合わせたデザイン図を描くことができるため,製織する前に織物の外観を把握することが可能となった。
これらの成果を,中能登地域の織物業20社で構成されているドビー織物CAD研究会を中心に普及指導した。さらには,中能登地域織物業が,開発されたソフトウェアおよび織物組織サンプル帳等を活用し,新製品を開発し,提案できる企業に育つことを期待する。