平成10年度研究報告 VOL.48
発光原理を用いたバイオセンサによるBOD測定法 |
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| 化学食品部 |
宮本正規 渡部芳夫 |
| (株)イシメックス |
村橋瑞穂 松井暢人 |
| 金沢大学 |
今枝大門 廣瀬幸雄 |
| 北陸先端科学技術大学院大学 |
民谷栄一 北川圭 |
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発光微生物が有機物を資化した量に応じて発光する原理を応用したバイオセンサによってBODを推定する技術について検討し,以下の結果を得た。
(1)有機試薬に対する発光強度とBODとの間に高い相関性が得られた。
(2)微生物試薬に対するBOD応答性は,20分以内であった。
(3)発光微生物に対する食品,都市下水等を対象とした流入原水のBOD評価に適している。しかし,忌避物質を含む排水にはバイオセンサに適さなかった。
キーワード:発光微生物,生物化学的酸素要求量,全有機炭素,工場排水,センサ,発光強度
BOD Measurement Method by Using Biochemical Sensor Based on the Luminescence
Principle
Masaki MIYAMOTO, Yoshio WATANABE, Mizuho MURAHASHI, Nobuto MATSUI
Daimon IMAEDA, Yukio HIROSE, Eiichi TAMIYA and Kei KITAGAWA
In this research, the short time evaluation was investigated by bio-sensor.
This principle of bio-sensor is based on the emission of luminous bacterium,
which assimilates the organic compounds.
The results are as follows ;
(1)High correlation between light intensity and BOD for organic reagent
could be obtained.
(2)The BOD sensor response of the bacterial reagent is desirable within
20 minutes .
(3)The luminous bacterium is suitable for the BOD evaluation of the waste
water intended for the food factory and the municipal waste water. However,
it is unsuitable to measure waste water which contains the evasion material.
Key Words :luminous bacterium , BOD, TOC, waste water, sensor , light
intensity
1.緒言
製造業をはじめとする各種特定施設から排出される工場排水を浄化して公共用水域に放流する場合,水質汚濁防止法ではBODで規制している。BODは水中の好気性微生物の増殖や呼吸作用によって20℃で5日間に消費する溶存酸素量を意味し,水質管理上極めて重要な指標である。しかしながら,このBOD測定は習熟を必要とする手分析でしかも,長時間を要することから水質管理面において迅速な対応が取れない大きな課題となっていた。そこで,これまでのBODに代わって短時間に計測できる新たなバイオセンサによる
BOD測定法の開発が望まれていた。
軽部ら1)は国内で初めて酸素電極上に固定化された微生物(酵母菌:Trichosporon
cutaneum)の呼吸活性による酸素消費の減少に伴う電流の減少値からBODを短時間で求めることができるバイオセンサを開発した。JIS
K 3602(1990年)では同BODセンサについて規定が設けられた。しかしながら,これまでの機器使用上の課題として,1)長期保管中に微生物の固定化膜が乾燥し,微生物の呼吸活性の低下が懸念される。2)微生物における呼吸活性の経時変化に対処するために数時間毎に検量線を作成する必要性が挙げられる。
本研究で開発を進めているBODセンサとは,前述した原理と全く異なり,海洋性発光微生物が有機物を資化する量に応じて化学発光する原理に基づくもので,海洋性発光微生物と高感度デバイスなどの組合せからなっている。
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| 図1 微生物の発光メカニズム |
本報告では,この新システムを利用して,試薬による基礎試験や各種産業排水のフィールド試験を行い,システムの信頼性について評価検討したので,その結果を報告する。