平成7年度研究報告 VOL.45(3/3)
人造大理石の熱水による劣化の促進評価
笠森正人 粟津薫 坂本誠 舟田義則
- 人造大理石は浴槽や洗面化粧台に多く利用されているが,最近では,24時間入浴可能なフルタイムバスが増え,過酷な使用環境への対応が求められている。しかし,熱水による耐久性評価には長時間を要しているのが実情であり,人造大理石の耐久性を迅速に評価する方法の確立が望まれている。
- 本研究では,人造大理石の劣化を促進させて耐久性評価を短時間で行う手法を確立するために,耐圧容器を使用した高温試験を実施した。その結果,人造大理石の色差および光沢は,熱水中での浸せき時間と温度に依存し,時間−温度換算則が成立することを見い出した。この時間−温度換算則により得られる色差の変化の予想値は片面煮沸試験から得られた結果とほぼ同様の傾向を示し,耐久性の優れた人造大理石の開発に有効な手法であることがわかった。
キーワード:人造大理石,耐熱水性,色差,光沢,時間−温度換算則
イシル(魚醤)に関する研究
−市販イシルの化学成分について−
佐渡康夫 道畠俊英
- 石川県奥能登地方に,イカとイワシを原料とした2種類の魚醤(イシル)が生産されている。このイシルは,秋田のショッツル,香川のイカナゴ醤油と並び日本三大魚醤の一つである。本研究では,イシルの品質評価および呈味特性を考察することを目的として検討した。
(1)全窒素が高く,高塩分濃度であった。
(2)有機酸の成分は,乳酸,ピログルタミン酸,酢酸,コハク酸,リンゴ酸,ピルビン酸などであった。
(3)遊離アミノ酸は,アラニン,グルタミン酸,グリシン,リジン,バリンなどが多量に含まれていた。
(4)オリゴペプチド態アミノ酸は,グルタミン酸,グリシン,アスパラギン酸,プロリンなどが主なアミノ酸であった。
(5)うま味成分として関係が深い核酸関連成分のAMP,IMP,GMPは検出されなかった。
以上の結果から,イシル特有の呈味性には核酸関連成分の関与はなく,遊離アミノ酸,オリゴペプチド,有機酸の含有量と組成比が大きく影響し,高塩分濃度であるにもかかわらず塩味のとれた呈味をもつものと推察された。
キーワード:魚醤,イシル,いか,いわし,遊離アミノ酸,オリゴペプチド,有機酸,核酸関連物質
山中地域漆器製造業活性化支援事業
−コンピュータを利用した漆器のデザイン開発技術の指導−
志甫雅人 高橋哲郎
- 漆器のデザイン開発工程の合理化を図るために,平成5年度より山中漆器産地でコンピュータを利用した漆器のデザイン開発技術の指導事業を展開してきた。具体的には,コンピュータグラフィクス技術の利用による漆器のデザイン開発支援システムの研究開発を行い,産地技術者の技術修得を目的とした産地内研修会を毎年開催した。
- 成果として支援システムの研究開発により産地内へのコンピュータの導入がスムーズに行われ,コンピュータグラフィックス技術の利用により,山中漆器産地のデザイン開発工程の大幅な合理化が可能となった。また産地内研修会の開催により,新しい漆器のデザイン開発技術を有する後継者を育成した。
キーワード:漆器,デザイン開発,支援システム,コンピュータグラフィックス
- 石川ハイテクサテライトセンター調査報告(第7報)
−スイスにおける非水染色および排水処理技術の調査−
沢野井康成
- 本県の染色加工業が21世紀に向けてさらに発展・繁栄するには,非水染色法と排水処理技術の開発が必要である。そこで,平成7年11月4日〜11月18日の15日間,スイス連邦共和国(以下スイスと略する)のスイス連邦工科大学(チューリッヒ)およびCiba-Geigy社(バーゼル)を訪問し,非水染色や排水処理技術について情報交換と技術調査を行った。主な内容は次のとおりである。
- (1)超臨界炭酸ガスを用いる非水染色は,環境問題に適応するが,装置の開発コストに問題がある。
- (2)排水処理技術において,微生物を用いた染料分解は可能であるが,染料分子構造によって分解速度に差が生 じる。
キーワード:非水染色,排水処理,超臨界
- 石川ハイテクサテライトセンター調査報告(第8報)
−豪州におけるセラミックス界面現象の研究動向の調査−
北川賀津一
- 1995年1月13日から1月26日の間,豪州核科学技術機構(ANSTO)の先端材料部門とシドニー市のニューサウスウェールズ大学を訪問し,セラミックス材料の表面科学と元素偏析を中心に調査を行った。
キーワード:先端材料,セラミックス材料,表面科学,元素偏析
- 石川ハイテクサテライトセンター調査報告(第9報)
−ミャンマーの漆器とミャンマーの文様−
水野旺
- 近年,科学的実証による漆技術の蓄積や伝統工芸文様の資料収集などを行ってきており,これらに関して今回は,ミャンマーの漆器と文様について情報収集することとし,同国を訪れた。
1)漆器は素地材に竹を用い,下地・中塗り・上塗りをしたのち,キンマと称する刻線文や刻線内に金箔を置く 箔絵で加飾を行う。キンマ用には,伝統色の赤・緑・黄色顔料を,箔絵には金箔が使われている。
2)文様には,唐草植物文・王朝風俗・怪鳥怪獣などが多くインド・ペルシャ・中国からの影響が伺われる。
3)ミャンマー産漆液や漆材料の収集と文様の写真撮影,また輪島市では新旧ミャンマー漆器の収集を行った。
キーワード:ミャンマー,漆器,文様,漆技術
東南アジアの生産工場と生活社会事情調査報告
一丸義次
- 現在,世界の政治・経済の大きなうねり,国際化,情報化,グローバル化の流れの中で,日本の産業経済はもとより地域の社会生活,人材教育の有りようまで問われて,21世紀に向けて新しい枠組みを求めて大きく変わり始めようとしている。とりわけ今後も急成長を遂げると言われている東南アジア・アセアン地域の新興勢力は日本産業の空洞化と深いかかわりがあると考えられるので,そこに働く人々と生産工場の実態を調査した。調査先は以下のとおり。
(1)ベ ト ナ ム・・・繊維工場 3社,機械工場 2社
(2)シンガポール・・・国際貿易センター,貨物コンテナヤード,シルクショッピングセンター
(3)インドネシア・・・機械工場 6社
キーワード:東南アジア,国際競争力,経済成長,賃金,物価,産業空洞化
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