平成7年度研究報告 VOL.45(2/3)
マイクロカプセル染料を用いた非水染色法の研究
沢野井康成 新保善正 山本孝 木水貢
- 染色工業では,省資源,無公害に優れた新しい染色法の開発が望まれている。本研究では,水を媒体としない熱昇華性染料と磁性体を内包したマイクロカプセル(以下MC染料と呼ぶ)を用いる非水染色方法について検討した。その結果,以下の知見が得られた。
(1)試作した平均粒径4〜8μmのMC染料は,ポリエステル布を良好に染色することができた。
(2)MC染料を用いて染色したポリエステル布と高温高圧法で染色したポリエステル布の耐光性試験を行い,比 較したところ両者に差は見られなかった。
キーワード:マイクロカプセル,非水染色,耐光性
保温加工織物のコーティング層内構造と保温性
沢野井康成 松川三郎
- 保温剤を使用したコーティング加工の研究では,コーティング層内構造と保温性との関係を調べることが重要である。本研究ではウレタンコーティング膜中に1種類または2種類の保温剤を混入した場合の保温性について,膜の内部構造観察結果を基に検討した。その結果,以下の知見が得られた。
(1)アルミ,銅保温剤を含むコーティング層は連続的な空気層,金属層および樹脂層からなる多重層状構造を形 成し,保温効果が大きいことが分かった。
(2)多孔質の火山灰保温剤はコーティング層内に多数のボイドを保有し,この空孔内空気の断熱効果で保温性を 高めることを実験結果から確認した。
キーワード:保温性,保温剤,コーティング加工,ウレタン樹脂
繊維廃棄物の再利用方法に関する研究
森大介 新保善正 滝本光成
- 本県繊維産業における廃棄物の現状と問題点を調べ,繊維廃棄物の再利用方法として糸と紙管を固形燃料化する繊維廃棄物固形燃料化装置を開発した。この装置は,糸と紙管を破砕し,水を加えながら混合,加圧することにより固形燃料化することができる。この繊維廃棄物固形燃料化装置を用いて,糸と紙管の配合比を変えて固形燃料化実験を行い,その成形特性を調べた。また,固形燃料専用ボイラーによる燃焼実験を行い,硫黄酸化物,塩化水素,および窒素酸化物等の濃度を調べ,環境基準を十分満たしていることを確認した。
キーワード:産業廃棄物,捨て耳糸,紙管,固形燃料
モータの放射電磁ノイズ軽減手法の開発
吉村慶之 中野幸一 漢野救泰
- モータのスムーズな回転や速度制御のためにインバータが使用されている。しかしながら,インバータは電気的なスイッチングによる方形交流波形を作成するため,高調波ノイズ成分が放射されることは避けられない。ここでは,インバータのスイッチングによる高調波発生の基本的原理と理論解析,実験結果との比較による高調波低減を検討した。さらに,高調波成分を抑制するためインバータの多重化に関する解析も行った。その結果,高調波の実測値と理論解析値とを比較し,本解析手法の有効性を確認した。また,多重化したPWM(パルス幅変調)制御により,高調波が抑制できることが分かった。
キーワード:モータ,インバータ,高調波,PWM,多重化
スリット光による非接触形状入力手法の開発
中野幸一 吉村慶之 志甫雅人
- 工場のラインにおける物体の寸法計測や位置検出を行うため,あるいはコンピュータの3次元データ入力用として,物体の形状を非接触で検出する手法や装置の開発が望まれている。本研究で開発した3次元位置入力手法の特徴は,レーザスリット光を物体に照射することにより,ステレオ法の欠点である対応点検出を容易にしたことである。また,物体上に光が照射されず3次元位置が計測できない箇所を,カメラ方向を変えて再度計測することにより,形状計測精度を向上している。実験結果より測定誤差は,平均して0.5%であった。さらに,計測した3次元位置データを基に形状の再構成を行うために,B−スプライン曲線による曲面フィッティングを行った。その結果,元の形に近い形状が再現できた。
キーワード:非接触,形状,レーザスリット光,ステレオ法,曲面,フィッティング
伝統工芸文様の調査と創作図案の提案
水野旺 志甫雅人 崎川浩三 高野千之
- 県内の公的機関が所蔵する文様資料の調査を行い,これらの資料を参考に新しい図案作成手法を検討して,文様作画手法のテキストと地域に係わる事柄をモチーフにした図案事例集を作成し提案を行った。
1)県立工業高等学校,輪島漆器商工業(協),金沢美術工芸大学,山中町漆器研究所,金沢市立図書館などの所 蔵する藩政期と明治以降の図案10,534点を調査し,1,615点を写真・コピーなどで収録。
2)写生対象物の特徴や形状の捉え方,便化における省略や補足の仕方などの作画手法テキストを作成。
3)兼六園内景勝の作画と,県内各市町村指定の動植物作画及びコンピュータグラフィック作画例などを作成。
キーワード:文様,写生,便化,コンピュータグラフィック
CADマネキンを用いた設計支援システムの開発と応用(2)
−人間工学による高齢者用浴室設計支援システムの開発−
志甫雅人 高橋哲郎
- コンピュータ上での製品設計を前提に,高齢者にとって安全で使いやすい浴室を設計するための設計支援システムの開発を行った。具体的には,高齢者の身体寸法と入浴動作に基づく身体形状モデル(CADマネキン)を利用しながら,コンピュータ上の3次元空間で高齢者用浴室を設計していくシステムを試作し,実際の設計現場での利用を試みた。
- 結果として開発した支援システムを利用することによって,設計者が高齢者の身体寸法特性を十分に考慮しながら設計を行うことが可能となった。また高齢者用浴室を設計する場合に注意すべき浴室の寸法項目が明らかになり,CADマネキンの利用によりその寸法評価がより簡易になった。
キーワード:高齢者,浴室,設計支援システム,CADマネキン,身体寸法,コンピュータグラフィックス
‖次のページヘ‖