漆塗膜の粘弾性
江頭俊郎、市川太刀雄、坂本誠
我々はこれまで漆塗膜の耐光性向上のために,漆液にウルシオール添加法や高速分散法などを適用してきた。漆液に対するこれらの処理によって、漆塗膜の力学的性質や化学構造にどのような影饗があるかを明らかにするために,数種類の漆塗膜の動的粘弾性を測定した。その結果,透漆は黒漆よりガラス転移点が高く,最低弾性率も大きかった。透漆と黒漆のいずれについても、漆液に含まれるウルシオール量が多いほど最低弾性率が低かった。高速分散処理した漆液も元の漆液に比ぺて乾操硬化が遅くなり,その塗膜の最低弾性率も低くなった。漆塗膜のガラス転移点や最低弾性率には,その漆の乾操時間が非常に影饗することが明らかになった。
キーワード:漆塗膜,ウルシオール,粘弾牲ガラス転移点
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