平成4年度研究報告  VOL.42(1/2)


数値制御を用いた機械の動特性評価

森本喜隆 中薮俊博 嶺蔭士郎

 工作機械や産業用ロボットの多くは、数値制御による位置決め方法がもちいられている。しかし、従来の検査方法では、エンドエフエクタの停止後に位置決め精度を測定評価するため、動作中の振動問題の解決には有効ではない。そこで、本研究では、この振動問題や高速化を達成するための評価方法として、起動時から停止後までの動的な位置決めを実測伝達関数を用いて評価する方法について提案する。さらに、実際のNC機械を用いて実測伝達関数を正確に測定する方法とその適応例について報告する。さらに、得られた動特性を制御系と機械系に分離することにより、位置決め時の行き過ぎ量や残留振動の発生箇所を特定する方法について報告する。
キーワード 数値制御、工作機械、動特性、実測伝達関数、位置決め、フーリエ関数




走査型プローブ顕微鏡による機械加工面の観察

廣崎憲一 吉田博幸 坂谷勝明

 走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子力間顕微鏡(AFM)に代表される走査型プローブ顕微鏡は、原子レベルの分解能を有する顕微鏡として注目を集めている。近年、広領域走査型のシステムも開発され、その観察視野として、原子レベル(Åオーダ)の微小領域から機械加工の表面粗さ(μmオーダ)の評価に用いるような広範囲な領域までもカバーし得るようになってきた。ものため、微細加工 . 精密加工分野においては、高分解能の表面粗さ計としても注目され、測定評価の手段の一つとして大いに期待されている。ここでは、STM、AFMにより機械加工面などの表面微細形状を観察し、精密加工分野における表面微細形状評価機器としての有用性を確認した。また、STM用深針の作製を試み、深針先端形状が測定に敏感に影響することをあきらかにした。
キーワード:走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、表面粗さ計、STM用深針



ロボットビジョンのための3次元物体の測定と認識に関する研究

中野幸一 吉村慶介

 本研究では、工場のラインに流れている機械部品を対象にした3次元(以降、3Dと略す)物体の計測と認識が可能なロボット視覚システムを提案する。本システムは、大きな2つの特徴を有する。一つは、2方向からのレーザスリット光を用いて、鏡面反射に起因する偽りの3D情報を効果的に除去できる計測手法である。二つめは、並列分散処理的に高速に処理するニューラルネットワークを用いて、P型フーリエ記述子、面積等による多角形面の認識、さらにアスペクトグラフに基づいて物体認識を行う手法である。従来の認識法と比べて、認識速度及び精度が一段と向上した。
キーワード:ロボット視覚、物体認識、レーザスリット光、ニューラルネットワーク




炭素繊維強化プラスッチックCFRPの長期変形の評価

笠森正人 粟津 薫

 炭素繊維強化プラスチックCFRPの長期クリープ変形の予測に関して、その基礎として、CFRPおマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂のクリーク変形を詳細に検討した。その結果、従来の時間-温度換算則による予測は精度が良くなく、新たに修正時間-温度換算則を提案した。この修正時間-温度換算則により、マトリックスである樹脂ばかりではなくCFRPの短期クリープ試験から、それぞれの長期クリープ変形を予測することができた。また、フイジカルエージングが進行しても、この修正時間-温度換算則が成立することも確認した。さらに、マトリックス樹脂の長期クリープ変形に複合則である平均近似解析を適用しても、CFRPの長期クリープ変形を予測できることを確認した。
キーワード:CFRPエポキシ樹脂、クリープ変形、時間-温度換算則



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