高温超伝導薄膜の実用化研究
-薄膜の微細加工による電子回路素子の作製-
瀬川和仁・南川俊治・米澤保人
レーザアブレーション法により,高温超伝導材科Ba2YCu30xの薄膜を形成し,XPS,XRD,AFM.SEMで評価した。また,ECRプラズマエッチング装置を利用したドライエッチングにより.微細加工を行った。
微細加工する際,レジストとドライエッチングのプラズマ衝撃による温度上昇などの影響が,超伝導薄膜の特性劣化の原因となることが明らかになった。薄膜とレジストの問に緩衝層として金の蒸着膜を形成することにより,プラズマ衝撃による劣化を抑えることができた。その結果,20μm幅の超伝導線の時,77K(液体窒素温度)で臨界電流密度は,約6×l04A/cm2・を示した。
キーワード:高温超伝導、薄膜、微細加工,ECRプラズマエッチング
金属系複合材料(FRM)の製造技術の研究
舟木克之・多加充彦・西村芳典
本研究は,高圧鋳造法により高性能SiCウィスカ強化アルミ合金(FRM)を作製することを目的に,1.FRMの組識中で繊維分散形態が機械的性質に及ぼす影響を調ベ,さらに2.鋳造されたFRMに二次加工を加え,機械的性質の改善について検討した。その結果,以下の知見が得られた。
1)プリフォーム作製過程の分散溶媒とウィスカとの親和性は,FRM組識中でのウィスカ分散状態に大きく影響し,組識中でウィスカの局部的凝集を起こしたFRMは.均一に分散したものに比べ,引張強度及び破壊靭性が約20%低下した。
2)FRMを冷間圧延すると引張強度は圧延率に伴って上昇し.約l4%圧延時に引張強度は最高と なり,その後は圧延率と共に減少した。
3)押出し加工は,FRMの機械的性質改善に有効であり,押出し比:6で加工したFRMの引張強度は鋳造したままの状態に比べ約l5%向上した。
キーワード:FRM,SiCウィスカ、高圧鋳造,機械的性質,冷間圧延、押出し加工
高性能繊維の製造技術に関する研究
-ポリエステル繊維の最適延伸条件-
高広政彦・山本 孝
汎用ポリエステルから高強カ繊維を作製する場合,その延伸条件によっては,ネッキングの発生が不均一となり.延伸むらを引き起こすことが知られている。この不均一ネッキング現象が発生すると,繊維構造も不均一となり,その物理特牲が著しく低下する。高強力繊維を作製する際に行われる延伸工程において発生する不均ーネッキング現象について,その発現メカニズムを理論的に検討した。更にこの理論をポリエステル繊維のゾーン延伸法に適用し,均一な延伸が可能な条件範囲を検討した。
その結果,ポリエステル未延伸モノフイラメントの延伸時に発現する不均一ネッキング挙動は.系全体のばね常数と深い関係があり,強伸度試,機のチャック問距碓や,延伸ローラ間距離等,延伸系の繊維の長さや繊維の断面積に大きく依存することが示された。
またゾーン延伸においては,試料長(延伸系のローラ間隔)を短くし,系のばね常数を大きくすることにより,比較的高い延伸比においても均一な延伸が可能であることが明らかになった。
キーワード:ゾーン延伸,ネッキング
黒漆の変色防止に関する研究
坂本誠・市川太刀雄・江頭俊郎
漆塗り製品の中でも特に「椀類」は,使用頻度が多く,その上,熱湯や洗浄などの過酷な条件下に曝されるため,使用していくに連れて,漆黒が褐色に変色する欠点がある。このため,本研究では,漆の着色剤の添加による漆液と漆塗膜の物性への影饗及び熱水による変色の原因究明と変色の防止方法,着色剤の添加とそれに伴う漆液と漆塗膜の物性への影響について検討を行い、次のことが判明した。
1)漆液の粘度や漆塗膜の色味から漆塗膜の鉄含有量は,0.4ー0.7wt%では.漆液の粘度は上がらず,刷毛塗り作業も可能であり,塗膜は漆黒になる。
2)促進熱水試験による漆塗膜の変色部を赤外線分光光度計による分析や走査電子顕微鏡による組識観察の結果から,変色の原因は熱水によって漆塗膜から水溶性のゴム質が溶出したためであった。
3)変色の防止方法として漆液へウルシオールを添加してゴム質を低減させる方法と焼付けによって,ゴム質を水に不溶化にする方法,着色にカーボンブラックを添加する方法が効果があった。
キーワード:漆,塗膜,食器,熱水,褐色,変色,赤外分光分析,走査電子顕微鏡,防止,カーポンプラック
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