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車いす用携帯スロープの開発

■津田駒工業株式会社 新事業企画室 中田明彦

■技術開発の背景
 繊維機械の製造販売を主に行っている津田駒工業株式会社では,新規事業として健康・福祉機器関連の開発に取り組んでいる。近年,バリアフリーやユニバーサルデザインが叫ばれているものの,車いす利用者の行動を妨げる段差は多く存在しており,特に2段程度の小段差が車いす利用者にとって大きな障害となっている。
 今回,パラリンピックのアスリートである車いす利用者から,どこでも持ち運び,設置できる小型・軽量の携帯用スロープの要望があり,開発に取り組んだ。石川県工業試験場で耐久性・耐荷重試験を行い,商品化までのデザイン開発指導を受けた。また,リハビリテーションセンターの協力のもとモニター評価を行い,ニーズの把握・整理,安全性・操作性の評価を行った。

■技術開発の内容
 車いす利用者本人や介護者の操作性を高めて,安全性を確保した製品の市場投入を目的に設計し,実際の車いす利用者や介助者によるモニター評価を行った。
 評価結果をもとに,運搬しやすいよう持ち手を追加し,車いすと干渉しないよう側壁高さを低くするなどの改良を行った。さらに,工業試験場で耐久性試験と耐荷重試験(JIS-T9207相当)を行い,安全性の点でも問題ないことを確認した。

(図1 モニター検証の様子)

■製品の特徴
 車いす利用者のニーズと,福祉現場で多く用いられる小型スロープを調査して,類似製品に対して最も軽量でコンパクトな仕様とした。詳細は以下のとおり。
・ 車いす利用者が自分で運び,レール感覚を一定に保ちながら設置しやすいよう,2本のレールをベルトで連結。
・ レールの素材にアルミとCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の複合板を用い軽量化(3.5kg以下)と高強度を実現。
・ 約15cmの段差が10°以下の傾斜になり,携帯性に配慮してレール長さを90cmに設定。
・ キャスター回転に考慮してレール幅は18cmに設定。

(図2 試作品)
(表1 仕様)

■今後の展開
 本製品は,平成22年度に石川県バリアフリー社会推進賞・福祉用具部門で最優秀賞を受賞した。また東京の国際福祉機器展に参考出展し,来場者からコンセプトの評価を得た。
 この9月から障害者向けを対象にパイロット販売を行う。さらに実績を重ねた上で,介護レンタル分野への参入も視野に入れ,量産化を検討する予定である。