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減塩いしりの開発と商品化 -能登のいしりをより使いやすく-
■株式会社車多酒造 徳田耕二
■技術開発の背景
いしりは能登地方で古くから伝統的手法で作られている,イカやイワシを原料とする魚醤油である。いしりには豊富な遊離アミノ酸に加え,抗酸化性や血圧上昇抑制効果を示す機能性成分も含まれている。しかし,塩分が約25%程度と高いため使い勝手が良くないことが,一般家庭も含めた新規市場への需要拡大のネックになっていた。そこで,いしりから塩分だけを低減化する技術について工業試験場から技術移転を受け,量産化技術を確立した。
■技術開発の内容
(1) 電気透析装置によるいしりの塩分除去を検討し,塩分濃度を15%まで低減した。電気透析とは,微細な穴のあるイオン交換膜の間を流れるいしりに電気を流すことで,塩分を選択的に膜の外に取り除く仕組みである。
(2) 遊離アミノ酸,機能性成分の量が,脱塩後も維持されることを工業試験場の分析により確認した。
(3) 減塩による微生物の繁殖が懸念されるため,焼酎添加による腐敗防止を確認した。
(電気透析装置)
(処理原理のイメージ)
■製品の特徴
(1) 大豆醤油の一般的な塩分16%より低い13〜14%であり,使い勝手が格段に向上した。
(2) いしりの遊離アミノ酸は一般的な大豆醤油の約1.6倍と極めて豊かな旨味を有する。
(3) 大豆醤油のグルタミン酸ナトリウムを主体とした味わいに対して,いしりは各種アミノ酸の複合的な味わいが特長である。
(4) 大吟醸粕由来の焼酎を加えることで保存性が向上するとともに,香味の改善が可能となった。
(一般的な「いしり」との塩分比較)
(商品化した「減塩いしり」)
■今後の展開
昨年秋から販売を行っているが,新たに作成したレシピ集を販促ツールとして有効に活用していきたい。また,展示会等での周知を図り,業務用での販売を視野に入れている。