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アルミニウム合金砂型鋳物の欠陥低減と真空チャンバへの適用
■谷田合金株式会社 ○駒井公一
■技術開発の背景
近年のアルミニウム鋳造製品の高付加価値化戦略の一つに,展伸材から削り出して製造している部品を鋳物に置き換えることが挙げられる。しかしながら,鋳物は内部に微細な空隙欠陥(ピンホール)を多く含んでいるため,機械的性質や外観上で展伸材より劣る。また,部品の表面には保護被膜としての陽極酸化処理(アルマイト)を行うが,アルミ合金鋳物の金属組織中の晶出Siは,この陽極酸化処理の仕上がり状態に大きく影響する。つまり,アルミ鋳物の組織には,Siがち密に分散している共晶部分とAlのみの部分とが混在するため,厚さの不均一な陽極酸化皮膜を生成し,十分な表面保護特性が得られない。このように,展伸材部品を鋳物化する際には,ピンホールの抑制と鋳造組織に起因した不均一なアルマイト皮膜へ対応という2つの克服すべき課題がある。
■技術開発の内容
今回我々は,半導体製造装置の真空チャンバのように,微細な欠陥や陽極酸化処理皮膜の不良により内壁面からのガス放出が許されない製品へのアルミ合金砂型鋳物の適用を行った。そのブレークスルーとして,国内での製品適用報告がほとんどない砂型差圧鋳造技術に着目し,工業試験場の共同研究により,鋳造条件がピンホールやヒケ巣等の内部欠陥発生に及ぼす影響について検討した。さらに,合金組成や熱処理条件の検討によりアルマイト性を阻害する粗大なSi晶出物を生じない低Si合金の開発を行った。その結果,従来展伸材から機械加工して製造していた真空チャンバの砂型鋳造品への置き換えに成功した。
■製品の特徴
現在,図1に示す様な半導体製造装置用真空チャンバを製造・販売している。機械加工面ではピンホールに起因したアルミニウム合金鋳物特有のザラザラ感がなく,展伸材と同等の光沢が得られる。また,陽極酸化処理を施すことで内壁面からのガス放出がない。
(図1 製品化した真空チャンバの例)
■今後の展開
今後は,弊社独自の砂型差圧鋳造技術をさらに発展させ,新たな製品として航空機部品鋳物の製造を計画している。これに関しては,経産省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択を受けたことから,事業化に向けた技術開発を加速させていきたい。