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航空機用薄型FRP複合材の効率的加工技術の開発
■東興産業株式会社 営業技術部 辻谷正彦
■技術開発の背景
航空機の主翼下面には点検口のカバーとして,すべて設計形状が異なるFRP製パネルが片翼でも60枚以上取り付けられている。これらパネルの加工では外形のトリム加工と取付け用の穴加工が必要であるが,大きな主翼の組立て時に生じる誤差を最終的にパネルの寸法で吸収させるため,1機毎にさらに微妙な寸法・穴位置調整が要求される。そのため,個々のパネルの加工において,加工治具の段取り作業に時間を費やしたり,または手作業による加工が強いられたりするなど,加工能率の改善が課題となっている。
■技術開発の内容
FRP製パネル部品の加工能率向上と自動化を目的に,従来からこの加工に携わってきた弊社とメカトロ・アソシエーツ(株)(小松市),工業試験場の共同研究により,FRP製パネル加工用の専用複合加工機の開発に取り組んだ(経済産業省:H22戦略的基盤技術高度化支援事業)。要素技術として,[1]多様なパネル部品を真空パッドにより自在な位置で吸着できる保持装置(担当:東興産業(株),図1)を核に,[2]切削加工後の毛羽立ちを除去する面取りロボット(担当:メカトロ・アソシエーツ(株)),[3]薄板パネルのたわみを防ぐ切削抵抗低減型ドリル(担当:工業試験場)の開発を行った。
(図1 吸着式固定治具)
■製品の特徴
[1] 吸着式保持治具
・ 様々な形状に対応するため,3次元CADデータを基にパネルの形状に合わせて吸着パッドの位置・高さが調整可能。
・ 固定カメラの画像処理による段取りミス検出機能。
・ 個々に対応した固定治具の載せ替えを不要とし,段取りミス検出機能を有することにより,段取りミス検出+固定(段取り変え)のサイクルタイムを60秒以内とすることが可能。
[2] 面取りロボット
・ ロボットによる3次元CADデータに基づいたバリ取り作業の自動化。
・ CCDカメラによるパネルエッジの画像認識機能によるツールパスの補正機能。
[3] 穴あけドリル工具
・ 先端に小さなドリルと後段に鋭角の切れ刃のある段付き複合アングルドリルの考案。
・ 加工時のパネルのたわみに伴う跳ね返りを防止し,FRP材料の表層剥離・毛羽立ちの抑制。
■今後の展開
吸着治具の剛性向上とトリム加工の高能率化を行い,実用化に向けた開発をさらに進めると共に,川下企業へのアプローチを積極的に行う。