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品質の安定した地の粉

■輪島漆器商工業協同組合 隅 堅正

■指導の背景
  輪島市の小峰山を中心とした丘陵地で産出する珪藻土を焼いたものは地の粉と呼ばれ,漆と混ぜ木地に塗ると下地に厚みのある丈夫な漆器となる。この理由で地の粉は「堅牢優美」を看板とする輪島塗に欠かせないものである。輪島漆器商工業協同組合は,昭和50年に地の粉の製造装置を導入し生産の機械化を進めた結果,均一で優良な品質の地の粉を製造できることとなった。設備導入から30年以上が経過し,生産装置の中で老朽化が著しい真空土練機とガス炉は更新が必要となった。そこで導入すべき設備の仕様も含め,更新した設備で製造した地の粉と従来品との物性を比較評価することに関し,工業試験場の指導を受けた。

■指導の内容
 地の粉の製造工程は以下の通りである。
[1]珪藻土を小峰山から鍬で採掘する。
[2]珪藻土をロールクラッシャーで粗く砕き,真空土練機で空気を取り除き成形する。
[3]成形された珪藻土を長方形に切断し天日で自然乾燥する。
[4]成形物はおが屑とともに容器に詰めガス炉で蒸し焼きする。
[5]蒸し焼きした生成物をハンマークラッシャーとスクリーンミルで粉砕し分級する。
[6]分級後の地の粉を粒度別に混合して袋詰めして製品とする。
  真空土練機は原土の含水量で,ガス炉は焼成条件で地の粉の物性が大きく影響を受けることがわかり,これらを調整し,更新した設備で地の粉を製造した。

 得られた地の粉は黒色の土で,珪藻殻はミクロレベルの微細な細孔を多数持ち,鉱物組成,かさ比重,粒子径ともに従来品と同じで安定した品質を示した。輪島漆器商工業協同組合で,この地の粉に漆と米糊を混ぜ,木地に下地付け試験した結果,刷毛全体で伸びる感触が得られ,丈夫で重厚なものが得られた。

(小峰山原土)
(原土の電子顕微鏡写真)
(地の粉の外観)
(下地付けした木地)

■今後の展開
  地の粉は,ほぼ輪島塗の歴史と軌を一にしている貴重な資源である。小峰山の珪藻土は埋蔵量に限りがあるので,将来に憂いを残さないため珪藻土の埋蔵量や分布の調査と分析を進めつつ,輪島漆器と地の粉の伝統を守っていきたい。