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熱処理による鋳物用アルミ合金の高強度化への取り組み

■オカダ合金株式会社 魚野 正人

■技術開発の背景
  アルミニウム鋳造材では,高強度化のため熱処理が行われます。熱処理による機械的性質の変化については,昭和53年の日本鋳物協会の研究報告等で,時効温度の影響や2段時効処理の効果としていくつかの報告がされています。しかしながら,そのデータは現在,各社様々な条件で行われるTiB,Na等を添加した結晶粒微細化や不活性ガス吹き込みによる溶湯処理技術を反映したデータではありません。そこで弊社では,社内の溶湯処理基準により鋳造した材料について,独自に熱処理条件と機械的性質に関する調査を行い,高強度が必要とされる保安部品製造の競争力確保と,今後の熱処理工程内製化に向けた高強度化熱処理条件の検討を行いました。

■技術開発の内容
  アルミニウム鋳造材は,JIS規格材のAC4C, AC4CHを対象とし,熱処理による高強度化を検討しました。同時に,結晶粒微細化剤による高強度化を検討しました。
[1]時効処理時間,処理温度の違いに対する機械的性質の変化を調査し,さらに,機械的性質の向上に有効であるといわれる2段時効処理の効果も調査しました。
[2]結晶粒微細化剤の効果として,TiB添加による初晶αの微細化効果とNa添加による共晶Siの微細化効果を確認しました。さらに添加剤投入からの組織と機械的性質の経時変化についても考察しました。

■結果
[1]熱処理条件が160℃-6時間で引張強度は最大となり(図1),2段時効処理では強度変化は少ないものの,予備時効の温度条件が常温に比べ105℃で処理することにより伸びが1%向上することがわかりました。
[2]TiBを添加することにより結晶粒を微細化できましたが,機械的性質向上の効果は低いことがわかりました。また,Naの添加により共晶Siを微細化できることを確認しました。また,フロートタブレット使用前に用いるフラックスに含まれるNa(7ppm)においても共晶Siが微細化することがわかりました。

(図1 AC4Cの時効曲線)

■今後の展開
  弊社の鋳造および熱処理に対しての検証ができ,根拠となるデータ取得ができました。このデータを用いて,熱処理の内製化に向けた熱処理炉の導入や客先への説明資料として活用していく予定です。