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小型高出力半導体レーザ溶接機の開発

■株式会社村谷機械製作所 設計課 水上 望

■技術開発の背景
  電子機器部品や精密機器部品においては,その製造工程で微細部材や薄肉素材,特殊材料の溶接が求められており,製造コストの安い高出力半導体レーザ溶接技術が注目されています。しかし,これまでの装置では水冷装置が不可欠であり,故障の多くが冷却部分の水詰まりを原因としているため,その解消が求められています。
  そこで,(財)石川県産業創出支援機構から「平成20年度後期産学・産業間連携研究開発補助事業」の支援を受けて,工業試験場および(株)ベローズ久世と連携し,水冷装置が不要な高出力半導体レーザの開発を始め,精密溶接機への応用に取り組んでいます。

■技術開発の内容
[1]高出力半導体レーザの開発
  高出力半導体レーザでは消費電力の半分が熱になります。この対策として,水冷装置を使わずに空冷ファンだけで熱を放出し,装置内のレーザ素子の温度をレーザ光照射中でも一定にする冷却ユニットを製作しました。そして,これを組み込んだ高出力半導体レーザを開発しました(図1参照)。
[2]精密溶接機の製作
  新しく開発したレーザ装置を応用して溶接ベローズ用の精密溶接機を製作しました。
 溶接ベローズはドーナツ状に打ち抜いた薄板金属を複数枚重ね,その内側エッジと外側エッジを交互に溶接することで製造されます。
そこで,図2に示すように,溶接装置には高出力半導体レーザを斜めに2台配置しました。これにより内側エッジを両方向から溶接でき,安定した溶け込み部が得られます。

(図1 高出力半導体レーザ)
(図2 溶接ベローズ用精密溶接機)

■製品の特徴
  開発した高出力半導体レーザは,最大出力が100Wであり,これ一台で金属材料の溶融加工が可能です。そして,故障しやすい水冷装置を不要にすることで装置の維持管理が簡単になり,使いやすさが向上しました。また,これを利用した精密溶接機では,治具を交換するだけで溶接ベローズの製造に必要な全溶接工程をこれ一台で行うことが可能です。

■今後の展開
  開発した高出力半導体レーザについて,金属材料の溶接だけでなく,樹脂溶着や樹脂と金属の接合,さらには金属材料の熱処理への応用展開を図る予定です。