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複数の自然エネルギー発電装置からの入力に対応した独立電源装置

■小松パワートロン株式会社 業務部 寺井健二 開発室 五十嵐功一

■技術開発の背景
  当社(KPT)は,平成13年に1kW風力発電用DCDCコンバータを開発して以来,1〜10kW出力の小型風力用DCDCコンバータや系統連系用コントローラ,あるいはバッテリー充放電システム(独立電源)などを小型風力発電システムメーカに供給している。
  数kWクラスの小型風力発電システムの今後の販売に関しては,市場を睨んだ商用との系統連系を主力としながらも,無電源地域や防災システムなどの独立電源用途も視野に入れ開発を進める計画にある。しかしながら,用途拡大を目指したい独立電源が抱える課題としては,風況に左右されない安定的な電力供給を可能とする必要があり,この解決策として太陽光パネルや小水車などとのハイブリッド発電と蓄電機能を有する独立電源への要望が非常に強い。
  一方,国内においては,発電能力1kW以下の製品群で太陽光パネルに限定したハイブリッド型独立電源システムが既に量産,販売されているものの,数kWクラスは大半のメーカが製品対応できていない状況にある。
  これは,各メーカが所有する風車が独自の仕様ゆえに顧客のハイブリッド化の要望に合わせて,そのメーカ独自の一品一様の設計をせざるを得ず,その内容は風車(発電機)仕様ごとの独立電源と太陽光(発電機)の独立電源を組合せたような重複システムであり,高額かつ汎用性や柔軟性に欠けるものとなっている。

■技術開発の内容(補足資料参照)
  数kWクラスの小型風力発電システム市場は,これまで抱えていた発電効率の改善や安全性の確保,低コスト化などの課題解決とともに新規用途開発が進み市場拡大が予想される。
  本開発においては,風力と太陽光,水力などの再生可能な自然エネルギー,と必要であれば商用電源をも入力電源としてバッテリーに蓄電し,1kVAまでの一般交流負荷に一定時間電力供給可能なマルチ入力型独立電源を低コストに製品化することにより,小型風力発電システムの新たな用途市場を提供することにあった。
  製品開発にあたっては,JSTイノベーションプラザ石川の「平成20年度重点地域研究開発推進プログラム(地域ニーズ即応型)」に採択され,工業試験場をコーディネーターとし,富山大学との共同開発で装置の試作を実施した。並列接続や拡張に対応するため直流母線への接続を内部接続方式として採用し,KPTが特許所有する発電電力に追従する電力制御技術と既存事業で得意とする充電制御・電力制御技術を応用して,「風車コントローラ」部と「充放電コントローラ」部を設計・試作した。また,MPPT制御技術が必要な「PVコントローラ」部と,インバータ回路・制御技術を要する「インバータ」部の設計を富山大学,試作をKPTが実施した。
  それぞれのコントローラに加え,全体を制御するシステムコントローラをKPTが担当し,各々単体での動作確認後,システム全体の性能・動作確認をKPT・富山大学共同で実施し試作品を完成させた。

■製品の特徴
  本試作機は,風力(水車・ソーラーも同様)発電機の設置台数に関係なく同一システム内で発電制御できる技術であり,顧客が要望するシステム(台数)規模に対応できる。
  また,風力・水車・ソーラーのハイブリッド化の組合せを意識することなく同一システム内で発電制御できる技術であり,顧客が要望するシステムを簡略化,コストダウンが可能になる。
  更に,定格の違った風力(水力・ソーラーも同様)発電機であっても,その複数台が同一システム内で制御可能である。
  本技術を転用すれば,自然エネルギー発電のシステムメーカは,施主が要望する多様なシステムに対して,メーカ独自の仕様をもつ各種発電機を容易に組合わせることが可能となる。
  本製品化は,カスタムメイド対応の高額製品ゆえに市場拡大の妨げとなっていた小型風力用の独立電源と夜間発電のできない欠点を持つ太陽光発電,未だ電力制御機器の整備が遅れているマイクロ水車発電など各発電システムが抱える課題に対して,各発電システムの組合せによる欠点の補完が図られ,用途や設置環境などの諸条件に最適な独立電源システムを提供できることになる。
  このような製品は国内では前例がなく,KPTが独自に開発を進めているものであり,再生可能な自然エネルギーを活用する独立電源市場に,低コスト汎用型製品を実現するもので,モニュメント・啓蒙活動的な用途のみならず,新たな市場をも国内外で形成,拡大させる温室効果ガス削減などの環境改善の一躍を担うことになると確信する。

■今後の展開
  このようにマルチ機能を持つ本試作機は,顧客(システムメーカ)の開発段階での試験機としての利用範囲が広いことから,本試作機を今後は表示機能やセーフティー機能の強化を図り,使い勝手の良い試験機に仕上げる予定である。
  ただし,現行機はコントロールユニット各単体が研究開発用として多機能となっており,機能の重複もあることから,物自体が大きくコストUPとなっているため,今後の量産製品化に向けた開発を継続していく。
  今後は自然エネルギー発電メーカとのフィールドテストを実施し,更に利便性がよく高効率,低コストの自然エネルギー発電システムの実現性を調査,製品化につなげていく。

【補足資料】