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半導体レーザによる難溶接・耐熱溶接ベローズの開発

■株式会社ベローズ久世 第2製造職 目木憲一

■技術開発の背景
 弊社では多用な方法で金属製ベローズを製造しています。その中で,図1に示すような厚さ0.1mmのドーナツ状超薄円板の内周および外周を交互にレーザ溶接して製作する溶接ベローズは特に気密性や伸縮性に優れています。そのため,半導体製造装置や航空宇宙機器の重要配管部品として利用されています。
 近年,溶接ベローズの耐熱・耐食性向上が求められており,ニッケル基超合金など難溶接材料を素材とした溶接ベローズの製作を試みています。しかし,従来のYAGレーザ溶接では割れが生じ,安定して製造することができないのが現状です。

(図1 溶接ベローズ)

■技術開発の内容
 溶接割れの発生原因として,YAGレーザ溶接の過剰な局部的かつ急峻な加熱・冷却が考えられます。そこで,工業試験場で開発され,薄板溶接に特化した半導体レーザ装置を用いて,厚さ0.1mmのニッケル基超合金製ドーナツ状円板の内周エッジ溶接実験を行いました。
 半導体レーザからの楕円ビームを図2に示すように溶接線に対して45゚斜めにして照射し,出力を160Wで一定とし,溶接速度を変えて10回ずつ溶接試験しました。その結果,図3のようにいずれの条件でも溶接部に割れなどの欠陥は発生しておりませんでした。当社にて気密性を調べた結果,表1に示すように80%以上の確率で漏れのない溶接が可能でした。特に溶接速度が速い場合には全て漏れなしという結果を得,従来レーザ溶接による30%から大きく改善しました。

(図2 ドーナツ状超薄円板の内周エッジ溶接)
(図3 溶接部断面(レーザ出力160W))
(表1 気密性試験結果)

■製品の特徴
  以下のような特徴をもった溶接ベローズの提供を目標に開発を行っています。
[1]−250〜700℃の広い温度範囲においても優れた伸縮性を維持
[2]980℃の高温においても優れた耐食性を維持

■今後の展開
 半導体レーザ溶接によって,ニッケル基超合金製ドーナツ状超薄円板の内周エッジを従来のパルスYAGレーザ溶接よりも気密性高く溶接できました。今後は外周溶接治具等を検討し,溶接ベローズとして完成させ,その性能を評価する計画です。