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Webへのコメントを共有するシステム - Notea - の開発

■株式会社管理工学研究所  モバイル事業部  企画・マーケティング担当  大久保 潤

■技術開発の背景
  既存のWebの内容を他のWebと組み合わせて,動的にかつ自由に利用するというWeb2.0の考え方が提案されて数年が経過した。このWeb2.0は決して一過性の流行ではなく,今後のネットワークを通じての情報収集,発信方法を決定的に変貌させる契機となった。すなわち情報を自Webサイトに囲い込むという従来のスタイルから,既存の他Webとも連携を行い,新しい価値を創出するというスタイルへの移行ともいえる。
  このようにネットワークの使い方が新たな発達段階に入ったことが,Noteaを開発するに際して重要な背景となっている。

■技術開発の内容
 Noteaは,ネットワーク上で公開されているすべてのWebについて,利用者が任意の注釈(※1)を付けることを可能にするシステムである。本システムは以下3つのプログラム群から構成されている。
・付記された注釈を格納するためのサーバ(Noteaサーバ)
・注釈を画面に表示するためのスクリプト
・ブラウザとNoteaサーバの間をつなぐための,利用者PC用の専用通信プログラム(Notea Bridge)
この3つのプログラム群を通じて提供されるサービスをNoteaと呼称している。
 以下,Noteaの利用方法を例示する。利用者は今まで通りブラウザと呼ばれるWeb閲覧用のプログラムを通じて,任意のWebにアクセスを行う。検索エンジンを使い必要なWebを探す,また他人がメール等で通知してくれたURL(※2)をクリックし,直接表示を行う。これらの操作はNoteaが関与しても一切変わることはない。
 違いはそのWebで必要な情報が見つかった後にある。Noteaを使用すると,必要な部分についてコメントを残すことが出来きる。Webの内容をPCに保存し,加工をするという方法がすでに存在するが,Noteaには以下の利点がある。
1.Webの内容をPCに保存しないし,元のWebデータも変えることがない
2.元のデータを変えることがないので,自分が付けた注釈は他人から参照されることがない
3.PCに保存をするわけではないので,世界中どこに行っても自分が付けた注釈を見ることが出来る
 またNoteaサーバは付与された注釈を一括して閲覧,操作するためのWeb環境(※3)を利用者に併せて提供している。これ自身はWebとして見えるので,ブラウザ以外の特別な環境を必要としない。

※1:Noteaではアノテーションと呼称している
※2: Webの住所
※3:アノテーションウィンドウと呼称している

■製品の特徴
  前述のようにNoteaでは,任意のWebに注釈を付ける機能を通じて,直接関係が無いさまざまなWebに一貫した意味づけを行うことが可能になっている。例えば市場動向の分析を行う,新しい車の購入に向けて比較調査を行う。このようなことがブラウザでの注釈の付与と,アノテーションウィンドウでの注釈の整理を通じて容易に行えるようになっている。
  Web実体を改変することなく,任意のWebに対して注釈を付けることが出来る。その注釈が必要な場合,世界中のどこからでもアクセスできるし,逆に見せたくない相手には自分がつけた注釈を一切非公開にすることが出来る。この特徴は「既存のWebの内容を他のWebと組み合わせて,動的にかつ自由に利用する」というWeb2.0の考え方と非常に親和性の高いものである。むしろWeb2.0的に,必要な情報がネットワークに分散して置かれるようになったとき,Noteaのような,利用者の視点から情報を一元的にインデックスするツールが必ず必要とされると考えられる。

(図1 Noteaメニューとアノテーションの例)
(図2 アノテーションウィンドウの例)

■今後の展開
<機能的な視点>
 お互いに承認しあった利用者間で注釈を共有し,Webに対する意味づけをより発展的に行える様にすることを計画している。すなわち,他人の注釈を検索して利用できるようにするなど,利用者間での注釈の共有を図る。
<ユースケース的な視点>
 現在のNoteaは特に用途を定めないので,非常に汎用的な仕様となっている。これを対象領域ごとに特化させ,商品性を高める検討を行っている。一例を挙げると,コンピュータリテラシを向上させたいという高校,中学のニーズについてNoteaが支援できる部分があることが判っている。このようなニーズに適合した個別商品の開発を行っていく計画である。
<ビジネス的な視点>
 広告宣伝収入モデルと,ソフトウェア製品として売り切るモデル両方を検討している。汎用仕様のNoteaは広告宣伝収入で,特定領域向けのNoteaは売り切りモデルでという戦略を,機能拡張・個別商品の開発に合わせて,戦術レベルにブレイクダウンしていく。

【補 足 資 料】
http://notea.jp を参照。
Noteaの開発は,金沢大学工学部情報システム工学科人工知能研究室と石川県工業試験場,及び(株)管理工学研究所が実施し,システムの運用は,(株)COM-ONEと(株)管理工学研究所が実施している。