石川県工業試験場

■天池合繊株式会社　　天池　源受

■技術開発の背景
　 最近のファッション業界において，デザイン性や色彩に加え，特殊繊維や金属糸など，素材自体の個性を全面に押し出したものが脚光を浴びている。中でも，極細合繊糸を用いたメッシュ織物は専ら産業資材用に使われてきたが，女性らしさを演出できる繊細な素材として衣料分野での注目度も高い。弊社では，超極細モノフィラメント糸を用いた，ファッション衣料業界では世界最軽量の織物を生産･販売しており，その概要と今後の商品展開等について紹介する。

■技術開発の内容
　 弊社の主力品は，たて糸にポリエステルモノフィラメント7d糸，よこ糸に同7d糸または5d糸を用いた平織物であり，よこ糸にステンレスモノフィラメント糸（24μmφ）や絹糸（14中）を打ち込むことも可能である。図1はモノフィラメント糸の比較写真で，毛髪の数分の一の細さであることが確認できる。織物は極めて薄く軽量（たて･よこ7d布で11g/m2）であり，独特の光沢と透明感が特長である。｢天女の羽衣｣｢Amaikeスーパーオーガンザ｣｢AngelX（エンジェルクロス)｣の名称（いずれも商標登録申請中）で，各種展示会において好評を得ているが，今後は更なる差別化を図る上で，他社とも連携しながら当社独自の製品化を進める必要がある。

(図1　糸の拡大写真)

■製品の特徴
　 具体的な製品例として，箔座（株）及び工業試験場と共同試作したショール（図2）があり，細長いバイアス生地の縁を巻ロック縫いし，両面に金箔柄による装飾を施したものである。その他，全面しわ加工や転写プリントを施した生地も用いながら，ショール試作を継続中である。

(図2　試作ショール)

■今後の展開
　 織物としては既にヨーロッパの有名メゾンや国内有名ブランド得意先に販売しているが，自社独自の繊維製品の開発･販売は初の試みである。前述のショール等に関しては既に展示会等でPRしており，今年度以降はドレスやスカート等の衣料製品にも応用しつつ，高級ファッション分野を中心とした幅広い商品展開を進めていく方針である。