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太陽光発電システムの評価に関する研究

■電子情報部 ○橘 泰至 漢野救泰
■機械金属部 中野幸一

1.目 的
  太陽電池の評価手法としては,日本等で用いられているStandard Test Conditions(日射強度1.0kW/m2,太陽電池温度25℃を標準状態とする試験条件,以下STC)による評価手法に対して,米国では主にPVUSA Test Conditions(日射強度1.0kW/m2,周囲温度20℃,風速1.0m/sを基準状態とする試験条件,以下PTC)が運用されている。PTC評価手法の特徴は,気象データを用いて発電量を評価,予測できることであるが,日本国内ではPTCにおける評価事例は皆無であったことから,石川県工業試験場の太陽光発電システムにてPTCによる評価を実施した。

2.内 容
2.1 石川県工業試験場の太陽光発電システム
  太陽光発電システムの概要を図1に示す。本研究では,南面に設置してある多結晶シリコン太陽電池96.48kWを評価の対象とした。

(図1 石川県工業試験場の太陽光発電システムの概要)

2.2 STCによる評価手法
  STCによる評価手法では,太陽電池出力が温度に対して-0.5%/℃の割合で変化するとすれば,日射強度 Irr kW/m2,太陽電池温度 T ℃での太陽電池出力 Pt kWと,標準状態における出力PstckWの関係は,次式で表せる。

2.3 PTCによる評価手法
  PTCによる評価手法では,次の手順で基準状態における太陽電池出力Pptcを換算する。
(1) 屋外曝露データ(太陽電池出力 P kW,日射強度 Irr kW/m2,周囲温度 Ta ℃,風速 Ws m/s)を計測する。
(2) (1)で得られた計測データを基に,式(2)を回帰分析して,回帰係数A〜Dを求める。
(3) (2)で求めた回帰係数A〜Dと,基準状態における日射強度,周囲温度,風速の値を式(2)に代入することで,基準状態における太陽電池出力Pptcが換算できる。

2.4 太陽光発電システムの評価
  太陽光発電システムにおける同時期の計測データを基に,STC及びPTCによる評価を実施した。なお,評価の信頼性を高めるために,以下の条件を満たす計測データを用いた。
(1) 日射強度が0.85kW/m2以上であること。
(2) 前後5分間において,日射強度,太陽電池出力に急激な変動がないこと。

3.結 果
3.1 PTCによる評価結果
  回帰分析結果(表1)より,以下が確認できた。(1) 太陽電池出力は,日射強度との相関が最も強いため,回帰係数A,Bの値はC,Dと比較して大きな値になり,太陽電池出力と日射強度の特性(二次曲線)から,Aは正,Bは負の値になる。(2) 太陽電池の温度特性(温度上昇により発電効率が低下)から,回帰係数Cの値は負になる。また,風による冷却効果が得られるため,回帰係数Dの値は正になる。太陽電池の温度特性は,日射特性と比較して相関が弱いためC,Dの絶対値は小さい。

(表1 STC及びPTCによる評価結果)

3.2 STC及びPTCによる評価結果の比較
  図2より以下の結果が得られた。(1)どちらの評価手法も,標準状態及び基準状態における太陽電池出力Pstc,Pptcは,年間を通して10%程度の変動がある。(2)Pptcの値は,Pstcの値の80〜85%程度になる。

(図2 STC及びPTC評価結果(月別))