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ホームページ上の電子メモを用いた情報共有システムの開発

■電子情報部 ○加藤直孝 上田芳弘 林 克明
■(株)富士通北陸システムズ   中川健一
■北陸先端科学技術大学院大学 國藤 進

1.目 的
  我々が日頃,資料に何らかの付記事項を書き残す手段として,メモの書き込みや付箋貼り付け,あるいは重要な箇所にアンダーラインやマーカを引く方法をよく用いる。このような方法で資料に付記される文字や図示情報は,アノテーションと呼ばれる。一方,組織内あるいは組織間の円滑な情報伝達,情報共有あるいはコミュニケーションを実現する手段として,オフィスにおける情報インフラが必要不可欠な存在となっている。近年では,情報システムを活用して,資料の電子ドキュメント化による情報共有の効率化が進んでいる。本研究では,より効果的で利便性のある情報共有システムの開発を目的に,複数の利用者がインターネットあるいはイントラネットを利用して,Webブラウザ画面に表示される内容に付箋やマーカー感覚で電子的なメモ(アノテーション)を付記することにより遠隔コミュニケーションを支援するシステムを開発した。本報告ではその概要を紹介する。

2.内 容
2.1 システムの概要
 本研究では,Webブラウザ画面上に重ね合わせて表示可能なアノテーションを特にWebアノテーションと呼ぶことにする。システムの利用イメージを図1に示す。利用者はWebブラウザ画面から本システムにログインして自作したWebページあるいはインターネット上に公開されている任意のWebページを表示させ,そのページにWebアノテーションをコメントとして付記し,その状態を本システムに保存することができる。同時に複数の利用者がログインした場合は,全員のPC端末に同一の画面が表示される。

(図1 システム構成図)

2.2 Webアノテーション機能
  Webアノテーションの種類には,円,四角形,矢印,文字,画像,半透明マーカー,取り消し二重線などを用意し,また,画面に表示しない補足情報として,1)ユーザ名,2)グループ名,3)コメント文,4)表示座標値,5)生成時間,6)外部参照ホームページアドレス,7)添付ファイルなどがある。図2にホームページのデザインレビュー時のWebアノテーションの例を示す。Webページ上に付記したアノテーションは,マウスでドラッグすることにより任意の場所に移動できる。また,アノテーションをマウスで右クリックすることで,編集メニューを表示させて,上記補足情報の修正追記が行える。さらに,同時接続された複数のPC画面上に表示されたすべてのWebアノテーションを対象に,一斉に表示・非表示を制御したり,ユーザ別,グループ別にリアルタイムに表示を切換えたりできるほか,他の利用者にはWebアノテーションを表示させない個人メモ機能や,特定の利用者だけに特定の情報をプッシュ配信する機能など持つ(特許出願中)。なお,検索機能には,フリーソフトウェアのXMLデータベースを利用しており,ユーザ名などで過去のデータを検索利用できる。
(図2 Webアノテーションの例(左図:原画面  右図:アノテーション付記画面))

2.3 適用実験と評価
  試作システムの評価として,性能実験およびホームページのデザインレビューでの適用実験を実施した。性能評価については,北陸IT 研究開発支援センター(能美市辰口町)の設備を利用した。PC500台のWebブラウザ画面の連携動作に要する時間は,6秒以内で可能であった。またWebアノテーションの新規生成は,生成個数と時間が線形に比例し,例として200個の生成に10秒程度の処理時間を要し,以上の結果から性能面での実用性を検証した。
  つぎに,デザインレビューでの適用実験では,6名の被験者に試用してもらった結果,1)アノテーションで付記されたコメントをユーザ別や様々な分類で表示でき,意見の集約に役立つ。2)各自都合の良い時間に利用でき,また必要に応じて相手と同時に利用する形態で情報共有が行える。3)校正箇所やレイアウト修正の位置を直接画面上で指示でき,校正ミスの抑止に効果がある。4)原稿と校正指示の履歴を電子化により一元的に管理でき便利。などといったコメントが得られ,利用効果を確認することができた。

3.結 果
  Webページ上に電子的なメモ情報を付記することで複数の利用者間の遠隔コミュニケーションを支援するシステムを開発し,評価実験により,本システムの性能と実用性を検証した。応用分野として,遠隔会議,e-ラーニング,技術相談,ヘルプデスクなど様々なアプリケーションへの応用展開が考えられ,今後適用事例を増やしながら実用化を図っていく予定である。