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高速織機の振動・騒音の低減化研究

■繊維生活部 ○森 大介 土定育英
■機械金属部 新谷隆二 高野昌宏
■金沢大学 喜成年泰    
■津田駒工業(株) 平井 淳 米島芳之

1.目 的
  近年,織機の高速化による織布工場内外の振動及び騒音の防止について,環境やオペレーターの健康面等への配慮から多くの関心が寄せられている。繊維産業においては,過去にシャットル織機の代替としてジェットルームが普及したことで,シャットル音が無くなり織機の低騒音化が図られた。しかし,近年,織機の高速化に伴い,織機回転数は,ジェットルーム普及当初の倍以上となっており,織布工場の振動及び騒音が再び問題となっている。  
  そこで,本研究は,織機から発生する振動と騒音の要因を調べ,効果的な振動騒音低減対策について検討し,織布工場におけるオペレーターの作業環境を改善することを目的としている。

2.内 容
2.1 織機の騒音について
2.1.1 織機の騒音解析方法と結果
  実験は,工試の津田駒工業(株)製エアジェットルームZAX型170cm幅を用い,測定対象である織機の周辺に図1のような測定面を設定した。各格子は1辺の長さが200×200mmであり,格子の頂点を測定点とする。そこで,設定した測定位置に,計測プローブの音響中心を合わせ,測定プローブ軸方向を測定面に垂直な方向に固定し静止させて測定を行った。測定は,(1)音響インテンシティによる平均的な音の強さを求める手法,及び(2)織機動作と連動した騒音測定手法の2通りで行った。
  (1)の手法による実験結果を図2(a)に示す。図より,織機の中央部の騒音が大きいことがわかる。また,織機動作と連動した騒音解析結果より,騒音の発生箇所やたて糸開口直後に騒音が最も大きいことから,織機から発生する騒音の主要因は,綜絖と綜絖ロッドの衝突音であることがわかった。

(図1 騒音の測定方法)
(図2 騒音測定結果)

2.1.2 織機の騒音対策と効果
  綜絖と綜絖ロッドの衝突音を低減するため,たて糸開口部に限定し,且つ,オペレーターの作業性を損なわない部分防音カバーの試作開発を行った。試作部分防音カバーの装着例を図3に示す。これは左右に配置されたエアシリンダーにより,上下に移動させることができ,内側に吸音材が貼り付けられている。この試作部分防音カバーを装着した場合の騒音の測定結果を図2(b)に示す。図2(a)と比較して,全体的に騒音が低減し,中央部では約4dB低減しており,部分防音カバーの効果が現れていることがわかる。 

(図3 部分防音カバーの装着例)

2.2 織機の振動について 
2.2.1 織機の振動解析と結果
  織機の振動の状況を調べるため,織機の有限要素解析モデルの作成を行った(図4)。織機の基本構造は,左右のメインフレームと4本の梁で構成される。また,織機にはたて糸開口装置,たて糸,たて糸ビーム,綜絖,及びクロスロール等が装着されているが,本解析では,解析を容易にするため,糸,たて糸ビーム及びクロスロールの加重を考慮した解析を行った。図5は,1次モードの結果を示している。周波数解析結果より,低次モードでは,4本の梁のみが振動するモードが発生した。このことから,左右のメインフレームは剛性が非常に高く,織機の振動には,4本の梁の影響が大きいことがわかった。

(図4 織機の有限要素法モデル)
(図5 有限要素法解析例)

2.2.2 織機の振動対策と効果
  有限要素法解析結果を基に,織機の4本の梁の剛性等を変えて織機構造の最適化を行った。これにより,4本の梁が同時に連動して振動するモードの発生を押さえることで,織機本体から発生する振動の低減を図った。

3.結 果
(1)音響インテンシティや織機の動作と連動した騒音解析により,騒音の発生箇所やタイミングから,織機から発生する騒音の要因として,綜絖と綜絖ロッドの衝突音が最も影響が大きいことがわかった。
(2)織機の振動解析結果を基に,織機構造の最適化を図り,織機本体から発生する振動の低減を図った。