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バニシング加工技術の開発

■大同工業株式会社 生産システム部 村井 重夫  産機技術部 尾野 琢磨

■技術開発の背景
  チェーンのうち,搬送用に使用されるものをコンベヤチェーンと称しています。特に大型のコンベヤチェーンについては,重量物の搬送に用いられることが多いので強い強度(繰り返しの負荷に耐えられる高い疲れ強さ)と剛性が求められます。
  強度メンバーであるプレート穴加工はプレス加工が一般的ですが,プレートの厚さが厚くなるほど穴の精度が悪くなる傾向があります。そういう対策の為に,これまでは必要に応じて穴の機械加工を施工して精度を向上してきましたが,プレス工程に比べて工程管理・納期管理で多くの制約がありました。そこで,弊社では以下の様にチェーンの性能向上策を検討しました。
(1)プレート穴精度を高める
(2)プレート疲れ強さの向上→圧縮応力の利用→穴塑性加工である特殊バニシング加工の採用
→疲れ強さ向上を試験確認→有限要素解析→はめあい寸法の最適化
特殊バニシング加工は,プレスにより明けた下穴に特殊工具を通すことで,下穴表面を押し広げるように塑性変形させ,所定の穴寸法に加工する方法です。この方法では,最適な工具形状を決めることが重要ですが,製品のプレート穴が大径になればなるほどスプリングバックなどの塑性変形の予測が困難となり,試行錯誤(試作・試行)の繰り返しが必要となります。

■技術開発の内容
  そこで,これらの塑性変形を予測し,最適な工具形状や工程を導出する為,石川県工業試験場のご協力により,有限要素法を用いた特殊バニシング加工のシミュレーション技術の開発に取り組みました。
加工接触面の摩擦係数,非線形材料特性などを合わせこむことで,加工後の穴形状や残留応力などを精度よく予測できることを確認しました。これにより特殊バニシング加工を,板厚12mm以上・破断強度75トン以上の製品へ適用可能になりました。

(図1 加工後のプレート穴変形分布 (穴断面形状))

■製品の特徴
  特殊バニシング加工の特徴として,プレート穴面粗度・穴寸法精度の向上があげられます。また,プレート穴表面を押し広げるように塑性変形させる為,穴の円周方向に圧縮の残留応力が発生し,従来のプレス穴に比べてプレートの疲れ強さが向上します。このことは,特に垂直輸送での疲労寿命の延長やチェーンの軽量化さらには設備のコンパクト化にとても有益です。

■今後の展開
 量産適用に成功した特殊バニシング加工を,他サイズのコンベヤチェーンへ横展開を準備中です。有限要素解析についても,部品単体から組み立て状態へ更に発展したモデル化を進めています。