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 ろくろ成形用白磁坏土の開発
 九谷焼技術センター ○佐々木直哉 若林数夫

1.目 的
 現在,九谷焼素地の成形は,ろくろ成形,鋳込み成形,ローラマシン成形法等があり,それぞれの成形法によって特性の異なった坏土が使用されている。ろくろ成形用坏土は,特に成形性が重要となるため,花坂陶石の水簸物(すいひぶつ)に木節・蛙目粘土を添加し調整されている。しかし花坂陶石の水簸物にはFeが多く,木節・蛙目粘土にはFe,Tiが多く含まれているため,焼成するとねずみ色がかった素地となる。業界としてもこの焼成色を白くし,ろくろ成形による手作りならではの様々な加工を施すことにより,高品質で高付加価値のある商品を作ろうという強い要望がある。
  そこで坏土の基本的性質である鉱物組成,化学組成,粒度,成形性,焼成色,耐火度の関連性を解決し,今までにない高品質で高付加価値のあるろくろ成形用白磁坏土の開発を目的とする。

2.内 容
2.1 坏土の試作
  最小2kgから最大30kgの調合で花坂陶石をベースに約40種類の坏土を試作した(図1)。ベースとなる花坂陶石は,スタンパーで粉砕したものを水簸し,目開きが75μmのフルイを通して使用した。他の原料との混合は二通りの方法で行った。一方は,水簸した花坂陶石をフィルタープレスで脱水したものと他の原料をミルで混合・粉砕する方法である。もう一方は,水簸した花坂陶石とミルで粒度調整した他の原料を泥ショウの状態で混合する方法である。それぞれ混合した泥ショウをフィルタープレスで脱水し,真空土練機や手で練って脱気して坏土を試作した(図2)。

(図1 試作坏土)
(図2 坏土の製造方法)

2.2 坏土の評価
  化学組成は,蛍光X線分析により定量分析を行った。粒度は,目開きが20μmのフルイを通し,残った試料のwt%を測定した。耐火度は,JIS R 2204に従い測定を行った。収縮,白色度を測定するため,径72mm,厚さ7mmの石膏型で押し型成形し円盤状のテストピースを作成した。白色度は,施釉していない素地について分光測色計を用いて白色度ハンターの値を測定した。成形性は,石川県九谷窯元工業協同組合,加賀市九谷陶磁器協同組合に依頼し,実際に窯元でろくろ成形して頂き評価を行った。

3.結 果
 表1より最終的な坏土の調合は,花坂陶石(75μm以下)が60wt%,福島珪石が10wt%,中国カオリンが30wt%となった。物性については,耐火度がSK27(1610℃),収縮は成形体が焼成体の1.2倍,白色度は施釉していない状態で74,粒度は20μm以上が10.9wt%であった。耐火度,白色度については,約40種類の坏土で測定した結果,耐火度は,Al2O3のゼーゲル数が2.5以上であればSK27以上となる傾向を示した。また白色度は,Fe2O3とTiO2が0.6〜0.8wt%の範囲であれば,白色度が75±3の範囲となる傾向を示した(図3)。化学組成は表2に示す通りである。製造方法は,図2のように従来の方法と違うところは,花坂陶石の水簸物をミルで粉砕することにより,粗い部分に含まれている鉄化合物等を細かくし,焼成後の欠点となる黒ボツ等を少なくすることができた。成形性については,両組合とも十分な評価を頂き,加賀市九谷陶磁器協同組合の妙泉陶房の御協力により径34.5cmの大皿も成形することができた(図4)。
  現在,この基礎データをもとに坏土を各製土所で量産化し,実用化に向けて取り組んでいるところである。

(表1 坏土の調合及び物性)
(表2 坏土の化学組成)
(図3 白色度とFe2O3+TiO2の関係)
(図4 大皿 径34.5cm)


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