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 光計測による豆腐凝固検査装置の開発
 電子情報部  ○米沢裕司 漢野救泰 橘 泰至
 (株)松浦電弘社  松浦隆弘
 (株)高井製作所  天野原成

1.目 的
 豆腐,ゼリー,ヨーグルトなどの食品は,その硬さや弾力などの物性(凝固状態)が非常に重要な品質項目である。しかしながら自動的に物体の凝固状態を計測する手段はなく,現状は,容器を開封した上で手作業によりレオメータ等の物性試験機で計測しているにすぎない。このような開封による検査では全数検査は不可能であり,抜き取りによる検査にならざるを得ない。そして,抜き取り検査では,ロットがすべて同じ結果である保証はなく,検査漏れのリスクを伴う。さらに,人手によるものであるため,検査結果の錯誤が発生し得る。その結果,品質の悪い製品が出荷され市場に流通することがあり,回復困難な信用の失墜と多大な経済的損失を被ることにつながりかねない。
 そこで,本研究開発では,食品,特に豆腐を対象として,非破壊,非接触かつ自動的に凝固状態を検査できる凝固検査装置の開発を行った。

2.内 容
2.1 凝固検査の方法
 凝固検査を実現する方法について各種の方法を検討し実験を行った結果,レーザーを照射した際に生じるスペックルパターンを利用することにより,凝固検査が可能であることがわかった。スペックルパターンとは,レーザーなどの干渉性の強い光を物体に照射した際に,物体の粗面から散乱した光が干渉し合って形成される干渉模様である。例えば,レーザーを豆腐に照射してカメラ等で撮影すると,図1のようなパターンが観測される。このスペックルパターンは常に同一のものが観測されるものではなく,凝固状態によって観測されるスペックルパターンが異なる。例えば,豆腐と豆乳では,スペックルパターンの画像特徴は大きく異なる。そこで,スペックルパターンの画像特徴をパソコンで自動的に解析し,凝固状態を自動的に検査する装置の試作を行った。

(図1 スペックルパターンの例)

2.2 凝固検査装置の構成
 試作した凝固検査装置の構成を図2に示す。コンベア上を移動する凝固検査対象物(豆腐)に対して,レーザーを照射し,照射した箇所をカメラ等により撮影する。レーザーは近赤外半導体レーザーを使用している。近赤外光は豆腐の包装容器に対する透過性があるため,開封せずに包装容器内の豆腐の凝固状態を検査することが可能である。
 なお,検査時に豆腐を静止させる必要はなく,コンベアに設置した光スイッチにより,コンベア上を移動する豆腐を検知し,カメラによる撮影のタイミングを制御する。
 カメラによって撮影したデータ(スペックルパターン)はパソコンに取り込まれ,パソコン上のソフトウェアにより,自動的にスペックルパターンの解析が行われる。解析は0.5秒以下の短時間で完了し,解析結果(豆腐の凝固状態)はモニタ上に表示される。

(図2 凝固検査装置の構成)

3.結 果
 本装置による凝固状態の識別性能を確認するための実験を行った。実験では,充填豆腐を作る際に使用する凝固剤の量を変化させ,凝固状態が異なる7種類の充填豆腐を作り,それをコンベア上に流し,凝固状態の違いが本検査装置により識別できるかどうかを検証した。なお,コンベアの搬送速度は毎秒200mmである。
  結果を図3に示す。グラフの横軸は凝固剤の使用量であり,通常の使用量を100%としている。この量よりも凝固剤が少ないと豆腐は通常よりも柔らかくなる。0%は凝固剤をまったく使用していないもので,豆乳そのものである。縦軸は,本装置により出力された凝固の程度を示す指標値であり,数値が小さいほど凝固していることを表している。図3からは,凝固剤の量と本装置の出力との相関がはっきりとわかる。つまり,本装置を使用することにより,豆腐の凝固状態を自動的に検知することができ,良品と不良品の自動識別が可能である。
  なお,本装置は轄h苣サ作所と鰹シ浦電弘社が商品化を行っている。今後は豆腐以外の凝固検査への応用展開や装置の小型化,検査精度の向上等を図る予定である。

(図3 実験結果)



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