全文(PDFファイル:227KB、2ページ)


 能登栗の皮むき省力化機器の開発
 機械金属部 ○古本達明 嶺蔭士朗
 企画指導部  多加充彦

1.目 的
 能登地区の栗生産農家では,収穫期の新鮮な生栗をむき栗に加工することにより高付加価値化を図り,県内菓子業者への安定供給体制の確立を目指している。しかし,現在皮むき作業は手作業で行われているため,高齢な作業者の負担は大きく,むき栗の生産量は5,6人がかりで1日25kgが限界となっている。このような状況の中,皮むき工程に自動機械を導入することにより作業者の負担を軽減し,生産性の向上を図る必要が生じている。そこで本研究では,皮むき工程においてこれまでほとんど製品化されていない鬼皮むき機の試作開発を行った。

2.内 容
2.1 むき栗の生産工程
  従来,むき栗の加工工程は専用工具による一貫した手作業となっていたが,省力化を図るため,図1に示すように鬼皮むき,渋皮むき工程に分割し,それぞれの工程に機械を導入する。まず,加工後の果肉に割れやひびが生じないように,生栗の最外皮である鬼皮むきを行う。次に,市販の渋皮むき機を用いて,果肉に密着した大部分の渋皮を剥離させる。これにより最後の手仕上げ加工は,わずかに残った渋皮を切除するだけとなり,従来の全工程手作業と比較して大幅に労力が軽減され,生産性の向上が期待できる。

(図1 むき栗の生産工程)

2.2 鬼皮むき機の基本構造
  これまで硬い鬼皮をむくため,数多くの物理的・化学的手段が提案されているにもかかわらず,多量の栗を短時間で処理する実用機はみられない。本研究では,鬼皮の表面にキズを付け,それをきっかけにして鬼皮を引きはがす機械的手法が有効であると考え,図2に示すような複数枚のノコ刃を取り付けたテーブルを回転させる基本構造を採用した。この方法は,ノコ刃によって表面にキズが付けられた栗が衝突を繰り返し,その干渉によって鬼皮をむくことが可能である。しかし,この方法は図3(a)に示すように回転時の遠心力により栗が容器側面に集中してしまい,ノコ刃との接触が不十分で,むき具合にばらつきが生じるという問題がある。そこで,図3(b)に示すようにテーブル上面から栗を加圧し,同時に加圧によって片べりしないように栗が適度に容器内を循環できる機構を提案し,さらに容器側面に鬼皮の分離と排出のためのスリットを設けた簡易試作機を製作した(特許出願中)。

(図2 基本原理)
(図3 回転テーブル上の栗の挙動 (a)加圧無し (b)加圧有り)

2.3 鬼皮むき実験
 試作機の加工性能を評価するため,加工パラメータと加工性の関係を調べた。加工時間の違いによる皮むき状態を比較した結果を図4に示す。加工時間が短いと鬼皮が残り,長いと果肉が損傷するのが観察でき,加工時間を調整すれば鬼皮のみを除去できることが分かる。同様にテーブル回転速度や加圧力等のパラメータについても性能評価し,果肉に損傷を与えずに鬼皮のほとんどを除去できる最適加工条件を選定した。その結果,本試作機により30分で50kgの生栗の鬼皮むきが可能となった。
 簡易試作機を用いて穴水町のJAおおぞら出荷場でフィールドテストを行い,作業者等の意見を集約して改良を行った鬼皮むき機を図5に示す。本装置は一度に5kg程度まで生栗の投入が可能で,高齢作業者による作業性および安全性を考慮し,操作ボタンの簡略化や加工タイマーの設置を行い,また,回転テーブル非常停止機構を付加した。

(図4 加工時間の違いによる皮むき状態の比較)
(図5 試作した鬼皮むき機)

3.結 果
 作業者の労力軽減および能登産むき栗の安定供給を目的として,効率的な皮むき機構を用いた鬼皮むき機を試作開発した。フィールドテストの結果,作業能率が大幅に改善され,むき栗の出荷量は前年比150%増(H16年度:3.2ton)となった。年間出荷量の最終目標は20tonであるため,むき栗の更なる安定供給にむけて,今後も産官連携による取り組みを継続する予定である。




* トップページ
* 平成17年成果発表会もくじ

概要のページに戻る